銀魂夢小説(短編)

□過去に捕らわれた仔猫
1ページ/1ページ


ふとした瞬間に脳裏を掠める。
仲間だった者達の笑顔、皆で酌み交わした酒の味、……そしてその者達の断末魔。

ヒュッ、と渇いた音が喉で鳴る。
飛び起きたいのりの額には汗が滲み、鼓動が早鐘を打っていた。
動悸と共に目眩がし、息苦しさに咳き込んだ時、

「どうしたよ」

背をさする手の感触。
耳元で聞こえた優しげな声。
見上げた先にいたのは、

「…晋助…!」

形容し難い感情が一気に込み上げ、たまらず目の前の彼に抱きついた。
驚きながらもちゃんと抱き留めた高杉は、いのりのその怯え様を見て全て理解した。

「また、魘されたか」

頬を幾筋も伝う涙を拭ってやりながら背をさする。

「…晋助は、…私の前、から、…いなくならない…?」

「そう易々と殺られやしねぇさ」

攘夷戦争ではあまりにも多くの仲間を失いすぎた。
いのりと親しかった者達も、あの戦で骸へと成り変わった。
終戦後、心にぽっかりと穴が空いたいのりの頼る術はもう高杉しかなかった。
幼少時代からずっと傍にいる彼以外、頼る者を知らなかった。
銀時や桂、辰馬ともそれなりに親しかったが、高杉との関係はそれの比ではない。
高杉はいのりの生きる希望なのだ。

「いつか討ってやる。仲間の敵も、おめぇの無念も。…俺が必ず」



((愛しているから、))
((例え何かを犠牲にしても、キミを護るよ))
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ