銀魂夢小説(短編)

□傍にいる理由
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彼の存在は彼女にとって計り知れない程に大きい。
だが、彼女が彼に抱いているのは《恋情》ではない。
ただただ、彼に《心酔》しているだけ。

「恋仲じゃ、ないんスか…!?」

驚愕に目を見開くまた子は拳銃を取り落とす。
そんなまた子をきょとんとしながら見上げ、頷くのはいのり。

「晋助とは、そんな仲じゃないよ…?」

「これは拙者も驚きでござる…」

「私もですよ」

万斉や武市も会話に加わる。
いのりの返答は変わらない。
高杉晋助と恋仲ではないという一点張り。

「では、どのような関係と?」

「……旧友…戦友?そんな、感じ」

「神風さん、恋仲ではない男女は普通、相部屋で過ごすなんてことはしませんよ」

「…昔からの付き合いだから…」

今だって、こうやって彼らと話す前までいのりは高杉の部屋にいた。
何をしていたかと言えば、単にお茶を飲んでいただけなのだが、

「…一度晋助に問うてみるが賢明でござろう」

万斉がいのりの背を押す。

「いのりは鈍感でござるから」

「絶対ただの旧友なわけないッスから!!」

旧友じゃなきゃ何なのだ、と思いながらもいのりは小さく頷き、もう行き慣れた彼の部屋への通路を駆ける。

「晋助、私と貴方は旧友でしょ?」

部屋を訪れ開口一番がそれ。
煙管を片手に弄んでいた高杉が視線を此方にやり、手招いた。

「来島か万斉に唆されたか」

高杉の横に腰を落ち着けたいのりは、至近距離で彼の顔を見上げる。
端整な顔立ちに野性を秘めた双眸はどこか儚げにも見える。

「俺はただの旧友をここまで連れ回しはしねぇよ」

「じゃあ、何で私を此処に置いてるの…?」

「いのり、選択肢は1つだ」

肩が抱き寄せられ互いの鼻先が触れる。

「おめぇは一生、俺の傍にいろ」

「…その理由は…?」

「ンなもん、おめぇが俺の特別だからだろ」

恋情を知らない彼女の鼓動が、トクン、と高鳴る。
気がつけば彼女は頷いていた。
瞳を細めた高杉が距離を詰める。


2つの影が重なるまで、あと少し。



((どうして貴方の傍にいたいのか、わかった))
((私は、貴方が好きなんだ))
 

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