銀魂夢小説(短編)

□襲撃
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例えば、不意に眠りから覚めた際に、
目の前にあったのが天井ではなく異性の顔だったらどうだろうか。
反応は人それぞれ。
奇声を上げる者もいれば、驚愕して硬直する者もいる。
いのりはどちらかと言えば、後者だった。

「チッ、起きたのかよ」

起きてはいけなかったというのか。
目覚めの常套句ではなく、彼が発したのはその言葉。

「…何、してるの…?」

「んなもん見てわかるだろ」

いやいや見てわからないから聞いているのだ、と内心思いながら状況を整理する。

久方ぶりにまた子と買い物に行く為に街に降りた。
偶には羽目を外せと言う彼女に甘えて隅々まで探索をした。
珍しいものや新たな発見など、いのりにとって未知の世界だった。
何せ高杉が、いのりを外に出したがらないから。
存分に街を楽しんで船に戻ると、そこに高杉の姿はない。
会合でもしているならば待っていようと彼の部屋を訪れ……そのまま寝入ってしまったのだ。

(はしゃぎ、すぎた…?)

それは仕方ないことだろう。
船の中だけでの生活も、楽しくはあるが飽きもくる。

「無断で外出した仔猫には、仕置きが必要だなァ…?」

「…お土産、買ってきたから、許して」

何とも緊張感に欠ける落ち着いた声音。
普段からぼんやりとした瞳は、寝起きなだけあって益々とろんとしている。

「美味しいお団子、だったから」

「団子なんかより食いてぇモンがある」

「何…?」

口角を上げた高杉がいのりの着物に手をかける。

「今はおめぇをいただくぜ」

するりと合わせ目を肌蹴て露わになった首筋を唇でなぞる。
ややあっていのりが口を開いた。

「…晋助も、食人族だったんだ…」

「………………あ?」

「前に、神威もそう言ってたから…。私は、美味しそうに、見えるの?」

次に驚愕したのは高杉だ。
いや、これは呆然とした、の方が合っているのか。

「食べられちゃうの……まだ、晋助と一緒にいたかったな…」

「……」

「でも、晋助がお腹空いてるんだったら、いいよ」

「…………はぁ……やめだ」

いのりの上から退く。
きっと彼女は夜這いの意味も知らない。
そんな彼女に『食べる』なんて言っても今のような解釈しかしないだろう。
何だか釈然としない面持ちで煙管をくわえ外の景色を眺める高杉を、いのりは首を傾げながら見つめた。



((襲撃、……失敗))

(晋助、食べないの…?)
(…また今度にしといてやらァ)
(ん、わかった…。出来れば、優しく食べてね…)
(…天然馬鹿が)



******
固定主ちゃんはこのテのことに疎かったらいい←
天然であんな発言するから並々高杉さんの苦労が増える。
それでも、無理強いしない高杉さんいい←
 

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