s.short-story
□たまには焦ってみようか
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いつも通りの放課後にせみ時雨が響く。学校指定のスクールバッグに教科書を詰めてふと気がついた。
立「あれ、綱海さんが来ない?」
おかしいな、いつもならチャイムの音とともに俺の教室まで来て「早く部室に行くぞ!」って急かすのに。まぁあの人のことだからこの前の中間テストのことで先生に呼ばれたのかもしれない。
俺は特に気に留めることはなかったが、だからと言って嬉しい気分なわけでもなく一人トボトボと部室へ向かった。
そして、俺はそこへ着いたとき自分の予想が大きく外れていたことを知って心底驚いた。
綱「おぉ立向居!!遅かったな」
立「綱海さんっ!?今日は珍しいですね、一人で行くなんて…」
まだ練習開始時刻には早いのに、そこにはもう綱海さんがいたんだ。
綱海さんは「まぁ気分だよ今日の!」となぜか笑顔で俺に近づいてくる。
綱「早く着替えようぜ、まだ誰も来てねぇんだから」
そう言ってのっかかるように俺の首から背中へと腕を回し、部屋の隅の壁に押し付けると。
綱「俺が迎えに行かなくて寂しかった?」
誰にも聞こえないような小さな声で、しかも耳元で囁いた。
立「なっ!?そ、そんなことありませんっ!!」
綱「本当に?」
立「ホントですからぁっ…いい加減に囁くのやめてくださいよっ」
綱「じゃあ、好い加減でやめてやる」
立「い、好い加減って!!…ひゃぁっ」
綱海さんが俺の耳にキスをしてカプッと甘噛みをする。
そのせいで口から零れた女の子みたいに高い喘ぎ声が心臓の音と相俟って羞恥を体の中で駆け回らせた。