short-story

□昼休み。
1ページ/1ページ


綱「立向居!!弁当屋上で食うぞ」

1年の教室までわざわざ俺を呼びに来た綱海さんに連れられて、俺は屋上へと上がった。


立「もう、どうしていつも突然なんですか?さっきクラスから注目されたじゃないですか」

綱海さんはいつも唐突に行動起こしては俺を巻き込んで、なぜかと聞けば毎度同じくノリだよノリ♪の一言ではぐらかしておしまい。
屋上のフェンスに背中を預けて座る今だって、弁当を奪われたあげく、かぶさるように俺を固定している。

綱「屋上ついてしょっぱなからコレ?って顔してんな」

立「だってそうでしょう、弁当を食べるって言われたからついて来たんですよ!!」

綱「それにしては…落ち着いてるよな」

当たり前ですよ。もう何度目だと思ってるんです!?その度に恥ずかしい目に遭って…。


だから俺は、今回こそは何があっても動じないと決意して来たんだ。コレくらいで慌てていたら綱海さんの思うつぼだから。

立「どうでもいいので、返してください俺の弁当!!」

思い切って言ってみる。しかし

綱「ダメ。俺が食べさせるから」と軽く一蹴。

思わず驚きの声をあげそうになったが、寸でのところで押しころす。
だめだだめだ。今回こそは引き下がれない!そう思っているから何度も抵抗した。

立「イヤです。自分で食べますから!はやく離れてくださいよ!!」

すると何度もダメだと繰り返していた口が突然黙り、小さく舌打ちをした。そして一言。

綱「口じゃダメ?なら体で黙って言うこと聞くようにしつけないとな…」


―――っ…!!!?


反応する暇もなく手首を赤い何かできつくフェンスに縛られた。

綱「こんなところに体育祭で使うたすきが置いてあるなんてラッキー」

それにはさすがに声をあげずにはいられなくなる。

立「ちょっ…綱海さん…。何するんですかっ…痛いですよ…」

それでもニコリとわらう綱海さんに言葉の続きが言えない。

綱「震えてる?目も潤んでるし…。まぁ安心しな。俺が弁当食わせる《だけ》だから」

そして俺の弁当を開けると、あーんして!!と攻められた。
仕方なく口を開けてご飯を食べる。何だろうこの複雑な気分。そう思いながらも口を動かし続けた。


――――そして食べ続けること数分。ようやくおかずがほとんど無くなり、ころりとプチトマトが2つ残った。
やっと残り2つだ…。
そう思ってほっとする。だからもう吹っ切れて、くせになったように口を開ける。なのに、綱海さんはそれを口の中に入れてくれない。
なんだかもどかしくて、動けない分口で催促する。すると綱海さんはいつにもましてニコリと笑うと、俺ではなく、綱海さん自身の口の中へとトマトを入れた。

そこまでされるとさすがに気がつく。

立「まさか…」

綱「そのまさか!!」

唇がふれて舌が口の中に侵入する。それと同時に転がってきた赤いトマト。

行ったり来たりををコロコロ繰り返して俺の中へと収まる。


―――甘い。


それが俺の率直な感想だった。…続いてやっぱりという思いがついてくる。
綱海さんはよくできました!!と頭をなでて軽いキスを額に落とした。

立「こんなに疲れる弁当初めて…です」

綱「あぁ!!こんなに楽しい弁当初めてだ!!」

またやろうぜ。と2個目を構えた綱海さんに、俺は力を抜いた。

あぁ、もう反抗できない…。

なんだかんだ言っても、結局俺は綱海さんには逆らえないと思う。


そんな俺の昼休みだった。


  おわり…            あとがき→

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ