short-story
□超次元演劇会!!
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文化祭から1ヶ月がたった今。俺と豪炎寺はすっかり学校公認のカップルになっていた。
まぁ恥ずかしくはあるがそのことについてこれと言った不満はない。それでも不満を強いて挙げるとするならば。
『第二弾』のことかなぁ…。
――――――
鬼「さて、2人とも来たところで早速始めるぞ、議題は『次に行う劇』についてだ」
もうこの時が来てしまったか…。
今回は突然ではなく、ちゃんと部活が休みの日を選んで俺と豪炎寺と鬼道は2年生使用可能な空き教室に集まっていた。
そう、先月文化祭のクラスの出し物で俺たちが行った『つるの恩返し(〜愛は種別を超えて〜)』という劇の第二弾を話し合うために…。
鬼「…と言っても前回同様、案は決まっているからほとんど何も決めることはない」
それはもはや話し合いではないな。『議題』って言ってたのに。
反響の多かったその劇は俺の知らないところで勝手にリクエストランキング1位を取り、新聞部とその裏でひそかに繋がっていた鬼道の権限でさらに第二弾決定までされてしまった。
しかもこれについて理事長は『盛り上がって結構、結構!!』とすんなり了解したそうだ。
複雑…。
風「…で、次の劇は一体何をやるんだ?」
そう聞くと鬼道は教卓から赤ずきんの本を……
――って待て!!!
風「おいっ!!この前は男でいいって…」
鬼「あぁ、男でかまわない。むしろ男でいてくれ」
…鬼道は本を取り出すと机において、意味深な言葉を呟く。
風「それはどういう意味だ?」
鬼「これといったことはない、今回は前回と違いインプロだからな、男のほうが演技が崩れないと思っただけだ」
いんぷろ?インプロってなんだ?
ちらっと横にいる豪炎寺を見ると、俺の視線に気づいたのか、豪炎寺が初めて口を開いて説明してくれた。
豪「インプロヴィゼーションの略で即興。つまりアドリブだ」
鬼「ああそうだ。もう少し付け足すと見る方も演じる方もスタートから結末まで、どうなるのか分からない劇のことだ。
この劇はその瞬間に起こったことを受け入れ、対応しなければ成立しない。だからこそお前は男の方がいいんだよ」
本当だったら台本も打ち合わせもなしにやるらしい…。
でも今回は中学生の演劇だ。そこまでする必要はないしその技量はないから、鬼道は基礎となる話を用意したらしい。
風「でもまたなんでこの選別…?」
鬼「今回はゲストにいい仕事をしてもらおうと思ってな、2人以上登場する話を選んだんだ」
そうか、今回はゲストがいるんだったな…。
鬼「と言うわけだ。さぁ、何をするのか大体分かったところで早速ゲストを紹介しよう。これ以上待たせるのも悪いからな」
入って来い。
そう言った鬼道の声に次いで教室前方の扉が開く音が放課後の教室に響いた。