short-story
□怖い夢を見たんだ!!
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〜円堂side〜
とある朝、宿舎の食堂。
俺の服のすそを指で軽く引っ張りながら風丸は顔を赤く染め、うつむいた状態で俺の後ろについて入ってきた。
円風「おはよう…」
全『!!!?』
――――
その原因は今朝のこと…
風「えんどぉぉぉっ!!」
明け方、俺の名前を声をおさえめに叫びながらそれはまるで抱き枕を抱くかのように真上から仰向けに寝ていた俺にのっかかってきた。
円「うおっ!?何だ?」
まだ寝ぼけている俺の顔に、窓から差し込んだ朝日に輝く水色の髪がかかる。
円「かぜまる…?」
風「・・・・」
風丸は俺の上に乗ったまま無言でうなずいて、すぐ。
風「怖い夢を見たんだ…」
震える声でそういった。
え?
よく分からなかったが、とりあえず目の前…いや俺の上で怯えている風丸に、俺は笑顔で大丈夫だと背中をポンポンと優しくたたいてあやす。
どうやら風丸自身も寝ぼけているらしく、パニックに陥っているようだった。
夢と現実の区別あたりが曖昧な状態でよくここまで来たと思った。
円「…大丈夫だって、ほら見ろよ!!太陽が昇ってもう明るいし…な?だから降りてくれよ」
苦笑まじりにそう言うと風丸ははっとしたように俺から降り、隣に座った。
風「あ、その…すまん。ちょっと俺どうかしてたみたいだ」
だんだんと頭がはっきりしてきたらしく、風丸は長く綺麗な髪を右手でくしゃっと乱した。
円「へーきだから気にすんな!!」
俺がそう言って笑うと風丸も少し恥ずかしそうに笑った。
もう大丈夫だろうと思い、俺は起き上がると、風丸を部屋に送って行くために扉のノブに手をかけた。
しかし、風丸はその手をばしっと掴み抵抗する。
そして一言。
風「なぁ円堂…。俺、今お前がいないとダメなんだ…」
――――
そして、冒頭にいたる。
俺は状況を説明した。
目の前にいた豪炎寺と吹雪がそれに加わって話が進む。
豪「珍しいな、そこまで風丸を怖がらせる夢って一体なんだったんだ?」
吹「きっと豪炎寺くんが女装でバンジージャンプでもしたんだよ!」
それはけっこうシュールだな吹雪。俺だったら逆に寝込むと思うけど…。
風「そんな夢…じゃない」
風丸が言葉を不自然に途切れ途切れに話す。振り返って確認してみると、吹雪の言った夢を想像して笑いを堪えるのに必死なようだった。
円「風丸案外もう平気なんじゃない?」
すると風丸は俺の言葉を首で否定する。その様子を見ていた吹雪は目に光のない笑いを浮かべていた。
豪「まぁ…吹雪が言ったことが本当じゃなくて安心したが、そんなに笑わなくてもいいだろう円堂」
円「…んぁっ?俺笑ってた?」
吹「うん。現在進行形でね」
それは気がつかなかった…。
円「悪い、悪い」
頭をかきながら笑って豪炎寺に謝ると。
吹「それより風丸くん?そろそろ本当のこと言ってくれてもいいんじゃないかな?」
!!?
やり取りの最中、吹雪が突然風丸に言った。
円「本当のこと? ってなんだ?」
風丸が俺たち(特に吹雪)の視線を浴びる。
風「えっと…ぉ」
気まずそうに風丸が口を開いた――
…その瞬間。
綱「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
食堂の外から綱海の叫び声が聞こえてきた。
円「綱海!!?」
俺たちは慌てて声のするほうへと向かった。