●story●
□着替人形
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君を地下に閉じ込めて、3ヶ月。
約束を守っていてくれているご褒美に、プレゼントを。
そんな単純な理由で、思い付きのままに立ち寄った洋服屋。
可愛らしい雰囲気のもの、大人っぽい雰囲気のもの、上品なデザインのもの、はたまたカジュアルなもの。
どの洋服を見ても、それを着て笑っている君の姿が目に浮かぶ。
ずいぶん迷ったんだよ?
だけど迷ってる時間があったら君に一秒でも早く会いたいから、とりあえず手元に取ったものを買って来たんだ。
着替えてる場所とカーテン一枚隔てた所で、椅子に座ってそう話すおにいさま。
その声はなんだか楽しそうで。
少しだけほっとした。
次の服を着て出て行くと、さっき以上に優しい顔で笑ってくれた。
「優姫、おいで」
「…?」
伸べられたおにいさまの綺麗な手をとる。
するりと抱き上げられ、次の瞬間にはその膝の上。
露出度高めの服のせいで、おにいさまの肌が、息が、直接皮膚に触れる。
「…今日はこれくらいにしようか」
なんだかどきどきしてしまって、返事もできない私をそのまま抱き上げて、
…どこに行くの?
たどり着いた先はおにいさまの寝室。
そのままベットの上に優しく下ろされて、
肌の上を滑る感触に、はっと我に帰った。
見ると、脱がされかけた服。
慌てて戻そうとしたけど、おにいさまの方が速かった。
「……っ!!」
驚いたやら恥ずかしいやらで、声すら出ない。
咄嗟にベッドに敷いてあるシーツを剥がして、体を覆った。
「大丈夫だよ、優姫」
何が大丈夫なんですかっ!
いつもなら何の疑いもなく信じるあなたのその言葉、だけど今だけは信じられない。
顔を真っ赤にして大きな目に涙を浮かべ、キッと、僕を睨む君。
そういう顔も可愛い、つい口に出そうになった言葉を飲み込んだ。
どんな君も可愛いけど、怒らすのは程々にしておくよ。
君の信用を失えば、僕の全てが無に還ってしまうから。
「今日は疲れたから、一緒に寝ようと思っただけだよ」
何もしないから、安心して?
そう言うと、君が纏う空気が少しだけ緩んだ。
それは僕を信頼していることの表れ。
本当は今すぐにでも、君の全てを自分のものにしてしまいたい。
だけど今は、獣の欲望に抵抗しよう。
焦る必要なんてない。
時間はたっぷりあるんだ、僕たちには。