○story○

□ちよこれいと
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「だけどね、」



抱き合ったまま暫くの沈黙の後、不意に枢が口を開く。



「結果がどうであれ、やっぱり君が作ってくれた物…作ってくれることが、いちばん嬉しいんだ」



そして枢は、腕の中に収まってすっかり落ち着いた優姫を立ち上がらせて、

並んで向かうのは、台所。










「僕が一緒だから、心配ないよ」

優姫にエプロンを着せて、次いで枢も同じ姿に。

「じゃあ優姫、先ずはこれを…」



何故お兄さまが?

本人に手伝ってもらったんじゃあんまり意味が無い気が…



そう思いつつも、枢の的確な指示に従い作り上げるのは、なんだか楽しくて。







1時間後。



「わぁ…っ」

二人の前には、出来上がったチョコレート。

溶かして固めるだけの単純な物。

最後に少しだけ細工はしたけれど。

君は本当に嬉しそうに、それを見て笑う。



だから、



「ありがとう、優姫」



額に軽く唇を落とすと、君の顔に紅、僕の鼻に甘い匂いが広がる。





本当は、チョコレートよりも、甘くて魅力的な味を知っている…―――



口に出すことを許さなかった想いは、僕の身を焦がす焔となって、全身を渦巻く。





優姫は身の危険を本能的に感じたのか、さっと体を翻し枢の腕からすり抜けて、

「さぁ、お兄さま、どうぞ」

と、完成したチョコレートを差し出した。







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