○story○
□ちよこれいと
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してやったり顔の優姫。
君はやっぱり甘いね。
逃げるなら、もっと遠くへ行かなくちゃ。
だけど、君を逃がすつもりはないよ。
チョコレートを持つ君の手首を掴んで、直接口に運ぶ。
白く細い指に溶けて付いたものまで嘗めとって、舌の上でそれを溶かす。
そして掴んだ優姫の腕を引っ張って引き寄せ、隙だらけの唇を自分のそれと合わせる。
優姫の口に流れ込む、甘い味。
それは同時に、少し苦い味がした。
「…っお兄さま、何入れたんですかっ!」
否、聞かなくても、わかる。
喉が熱い。
胸が焼ける。
頭がクラクラして、涙が出てくる。
お酒だ。
「おいしいね、優姫」
深いキスと、お酒の所為で、ちゃんと立っていられない。
為す術もなく、枢の胸に凭れ掛かる。
そのまま抱き上げられて向かうのは、もはや恒例の、あの場所。
…あぁ、結局今年も、こうなってしまうのね…
ひんやりとした空気の漂う廊下を抱えられて移動しながら、朦朧とした意識の中で、そう思った。
不敵に微笑う、目の前の彼は、宛らチョコレートの香りに酔った、"悪魔"。
「人聞きが悪いね、」
お仕置きだよ…
―――ほんとうに甘いショコラトルデーは、これから―――