◆story◆
□chessboard
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―――ごめんね、優姫…
いくら言葉を重ねても、過去を取り戻すことはできない。
ならば、君の未来が、少しでも明るいものであるように、僕は動くだけだ。
あの日。
最後にしようと思って、君に見えない所へ、追い付けないほど遠くへ飛び去った、あの時。
君の悲痛な羽音が、聞こえた。
愚かな僕を、君は逃しはしないだろう。
この世に生まれ落ちた時から戦いの"盤上"に置かれ、戦うことを強いられた僕たち。
奪い奪われ、離れては近づき繰り返しても、どちらかの"王"を詰めるまで、この戦いは終わらない。
争いを嫌う君を傷付ける道しか選べない僕はそれならば、君の傍を離れよう。
いっそ、君が僕を嫌ってしまえば。
君が僕を愛さなければ、君の傷は浅く済んだのに。
それでも、僕のために傷付く君故に、悦びを感じてしまう。
深い深い痛手を負った君を、愛しいと思ってしまう。
傍をずっと離れ、二度とその姿を瞳に収めることを諦めたつもりでも、その影が目の前をちらつく。
愛していると、何度でも言いたい。
僕の気持ちは変わらない。
君から逃げた僕は、それでも、君に近くにいてほしいと思う。
僕を見つけ出してほしいと、思ってしまう。
どうかその綺麗な羽で僕の元に舞い降りて。
堕ちていく闇からすくい上げて。
僕はもう、止められないんだ。
動き出した歯車は、自分では止められない。
早く、優姫…―――
――――――早く
助けて――――…