エリアラText

□タイトル未定
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マニュアルを無くしているだけだろう。
ネクタイが堅苦しかっただけだろう。


「エリック先輩!真面目に教えて下さい!」
「俺のどこが不真面目なんだ?!」
「どこもかしこもです!」

そこまで言ってアランは大きく息を吸う。

「まず!どうして遅刻してくるんですか?!」


…少し時間に遅れただけだろう。

嗚呼、あの眼鏡をかけた高枝切り鋏の堅物がふたりいるような錯覚さえする…。


あの時の綺麗な瞳はどうしてしまったのだろう。
どうして自分の隣には口をへの字に曲げた新人が座っているのだろう。
さっき怒って以来ずっと口も聞かない、黙ったままである。
随分の間そうしていた。

エリックは隣に座る新人をじろりと見た。

新人の方はこちらをじろりとにらみ返してようやく口を開く。

「エリック先輩は教える気なんてないでしょう?」
膨れたままであったが、口を開いた途端アランはそんな事を言い出した。
「あ??」
「あ、じゃないです。教える気なんてないでしょう、そう言ったんです」

アランが文句の一つも垂れたくなるのはわからなくでもない。
新入生として回収課に配属され様々な研修を受けていく。
回りの同期はそれぞれの教育担当上司に付き添って実戦に立ち会っていく。
デスサイズの取り扱いや、それぞれの特徴などその場で見て覚えていく。

それなのに、エリックはアランを現場に連れていこうとはしない、とりあえずソレを読んでおけとガイダンスで配られたテキストを読む様に言うだけだ。どんどん同期から離されていく。
とうに読んでしまい次はどうしましょうという話をしていた所なのだが、エリックは相変わらず一人で仕事を終えてデスクに帰ってくるばかりだ。

「そんなに現場が見たいのか?」
「もちろんです、早く現場に立ちたいのです」
「楽しいもんじゃねえぞ、おまえの思っている程には」
「わかってます」

わかっているのか居ないのだか。
そう言った目でエリックはアランを見る。
その透明の瞳に映るものは血であり生であり、人間の哀しいまでの生き様であることなど講義にて習っているのだろうに・・。


「今日はもう仕事が終わったから明日連れて行ってやる」

そう言うとアランはパッと嬉しそうな顔をみせた。


(続)

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