エリアラText

□君の傍でねむる
1ページ/1ページ

抱き締めた腕を、そっと抱き締めてくるその腕。
力無くして、君は一人だけの眠りの世界に落ちていく。


「行くな。」
そう言って抱き締めるとアランの意識はこの世界にもどってくる。

「どこにもいくわけがないよ、エリック。」

諭すように、アランはエリックに答えた。
背中越しに感じる自分と同じ体温。
抱き締めてくるエリックの腕にそっと触れた。

「眠るのは怖い。」
エリックが言う。

いつか、この眠りの瞬間に落ちる場所が永遠にもどれない場所ではないかと思ってしまう。
もう、この身体に触れることができず、声も聞けず。
思いでの中でだけしか君が生きていけないのではないかとおもう。
そんなことを想像するのはとても辛い。
ただ、いつかくる日に怯えながら君を抱いてねむる。

「どこにもいくわけがない、エリック、君のそばから俺がいなくなるなんて事はない。」

そんな気休めはいらないのに、彼の言葉はエリックを安心させる。そして、不安にもさせる。
気休めでもいい、彼の声を聞きたい。
そして、もし来る終わりの時には。
この手で君の終わりを。
だから、ただ、ひとりでなんて眠らないで。

「アラン、ひとりで眠るな。
俺をつれていけ。」

エリックの言葉はただ、運命にうち震えるこどものさけびだ。
死を前にしたものではない、ただ、アランの運命に砕かれただけ。

それをわかっているから、アランは抱き締めてくるうでをそっとそっと抱いた。

「俺はねむるよ。
君がいない日だって、そうじゃないときも。」

その言葉は残酷に、エリックに届く。
やわらかく拒む。

「どこへも行くな。」

「どこへもいかない。」

たってエリック、君は俺のものだもの。


Fin.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ