treasure(捧げもの)
□幸いなるかな天なる水
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「あべぇ、いい匂いがする…」
「っ、先にシャワー、浴びたからっ、な…」
圧し掛かってフンフンと匂いを嗅いでくる栄口の髪に肌をくすぐられて、変な声が洩れそうななった。
勘弁してくれよ……。
「阿部の匂い、すきぃ…」
「お前と同じ石鹸とシャンプーの匂いだろ」
「違うよぉ。阿部の、匂い、だよ」
一言一言区切るように言う栄口の息が耳にかかって、ゾクンとした。
……まったく、どうかしてる。
酔った栄口に翻弄されるのはいつものことで、決して嫌いじゃねぇけど。
そっと茶色の頭に手をやり、さりげなく位置をずらして撫でてやる。
幸い匂いを嗅ぐのに飽きたようで、目を閉じておとなしくしている。
高校時代より長くなった柔らかい髪を弄ぶように梳くとタバコの匂いがした。
俺の知らねぇヤツのタバコの匂いなんてさせてんなよ。
「な、場所、変わってくんね?」
「んー、ここがい……。も、俺…動けない」
胸に頭を擦り付けて「気持ち、い。もっと撫でて」って、ふにゃふにゃ言ってる栄口には性的な欲求はなく、ただ触れて甘えたいだけなんだろう。
密着した下肢から熱が広がってきて、相手を求めずにはいられない疼くような感覚を覚えているのは俺だけ……か。
今さらながら、濡れた胸元が冷たい。
栄口はよく平気だな。
ーーこの酔っぱらいめ。
「栄口、お前、シャワー浴びるのは明日でいーから、着替えだけはしとけ」
ぽんぽんと軽く背中を叩いて促す。
今夜は素直に甘えてくるお前を見れただけで良しとしよう。
「ほぇ?服はーー阿部が脱がしてくれるんじゃないの……?」
きょとん、と俺を見る、大きく開いた栄口の瞳には疑問符が浮かんでいる。
「ーーお前、いい加減に酔い冷まさないと襲っちまうぞ。ーーいいのかよ」
「え……、ーーうん」
「つ、」
素直に頷かれて言葉に詰まる。
「あーべ?シないの?」
「ンな訳ねーだろ」
「ふふ。でも、ベッドまで歩けないから抱いてって」
天真爛漫かつ色っぽい笑顔で誘うなよ。
「お前ってさぁ、なんで酔っ払うと、そんなにワガママで可愛くなんの?」
俺に勝ち目ねぇじゃねーか。
「ーーハタチ過ぎた男に可愛いって言うな」
フイって横を向いた栄口に「ワガママなのは認めるんだな」と言ってやれば、こっちを見てニコリ。
「阿部のほうこそ、可愛かった……。耳、弱いんだね」
なんて言いやがるから、
ベッドまで連れて行かずに栄口の弱いとこ、徹底的に責めてやったら、次の日、もうご飯作ってあげないって拗ねられて。
俺は、風呂上がりの栄口のために毎晩カルピスサワーを作ってご機嫌を取ることになった。
* * *
このお話を大好きな阿栄イラストサイト"2684号"の北本わるむ様に捧げます。
リクは阿栄でちょっとエロいの、だったのですが……。
ご、ごめんなさい。このお話の1ページ目は女子会でいい気分になったときに書きました!
そう、実は酔っ払いシリーズだったりするのです(-.-)y-~
長い割りにはエロが少なくてスミマセンm(__)m
途中、栄阿っぽくなってるし。
でも、自分では気に入ってます。
北本さまにも気に入っていただけたらいいな。
相互、ありがとうございました。
末永くお付き合いくだされば幸いです。
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