long・(水+阿+巣)→栄
□鬼と白玉
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side 水谷
* * *
「水谷、聞いてる?」
「え、あ…と、聞いてなかった。……ごめん」
君の横顔に見とれてました。
意外に睫毛が長いんだね。
柔らかそうな頬に触れてもいい?
……とは言えない。
「ちゃんと聞いとかないと。テス勉にならないよ?」
そうだ勉強会中だった。
俺が苦手な古典が栄口の得意教科だなんて、神様ありがとう。ちょっとしたこれも運命?
なんて思ってたら、お邪魔虫が一匹付いていた。
「クソレ、勉強しねぇなら俺に栄口返せ」
不機嫌な顔で睨んでくる阿部にムッとする。
「返せって、なんだよ。栄口は阿部のもんじゃないからね!」
「お前のもんでもねぇよ」
うっ。
痛いとこをついてきた。やな奴。
って、何その不適な笑い。
う〜。
「栄口、水谷の相手する時間もったいないぜ。俺が数学教えてやっからこっち来いよ」
栄口の苦手な数学が阿部の得意教科なんて、神様は意地悪だ……。
だいたいなんで勉強会のグループ分けが俺と栄口と阿部なんだよ。
栄口が一緒でなかったら、阿部なんか俺の部屋にあげないのに。
とはいえ、せっかく教えてくれてたのに、全然聞いてなかったのは事実で。
栄口、気を悪くしたかな。
横目で窺うと、ニコッと笑ってくれた。
……可愛い。
俺の頬もふにゃ〜と緩む。
「ほら、もう一回。教科書ちゃんと見て。あ、阿部、数学は後で頼むわ」
……阿部になんか、笑いかけなくていいのに。
教科書に視線を落とすと、目に入ったのはシャープペンを握る男にしては細い栄口の指。
手、繋ぎたいなぁ。
瞑想以外ではそんな機会ないかなぁ。
はっ、ダメだ。
ちゃんと勉強しないと。栄口を阿部にとられちゃう。
何より栄口に呆れられたり、嫌われたりしたくない。
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