long・(水+阿+巣)→栄
□I'll steal your heart. 6
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巣山は栄口が好きだし、栄口も巣山が好きなんだろう。
ただし、二人の「好き」には温度差があるのもまた確かなことなのだ。
ずっと二人を――否、巣山を見てきた自分には解る。
(解ったところで俺に何ができるわけでもないけど)
「嵐になるかな……」
思わず漏れた言葉に向かいに座る巣山が箸を止めて空を見上げた。
昼休みの屋上。頭上に広がる空は青く、晴れ渡っている。
「台風、どこかで発生してたっけ?」
巣山の問いに首を横に振る。
「いや、……ちょっと大気の不安定さについて考えてた」
「おう…?」
「ごめん、気にしないで」
にこりと笑ってみせる。栄口の笑顔には遠く及ばないが、それでも巣山が穏やかな笑みを返してくれたことに微かな満足を覚えた。
きっと栄口は計算で笑ったりはしないし、弱ってる心につけ込もうなんて考えもしないんだろう。
無意識のうちに人を気遣い、周囲の人々を和ませる、栄口勇人はそういう人間だ。
心根が優しく人の善意を疑うことない栄口。
清浄でいて正義感を振りかざすことのない彼は巣山にとって二人といない存在なのだ。
「西広の思考は俺とはレベルが違うな」
箸で摘まんだミートボールをパクンと頬張る巣山の横顔はいつもより幼く見える。
そういう顔もいいな、などと俺が思ってると知ったらどういう反応を示すのだろう?
ホント、俺の考えてることなんてどうしようもないことばかり。
箸を持つ節高の指が男らしくてカッコいいな、とか、あの大きな手はもう栄口に素肌に触れたんだろうか、とか。
そんなこと、考えているんだよ?
* * *
巣山視点にするか栄口くん視点にするか迷ったあげく西広くんの登場となりました(^o^)v
もちろん続きます。
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