long・(水+阿+巣)→栄
□I'll steal your heart. 2
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I'll steal Your heart. 2
“好きなんだ、栄口が"
巣山の声が頭の中でぐるぐる回ってる。
巣山は同じクラスで同じ野球部で、同じ……男で。
好きっていうのは友だちの好きとかじゃなくて……キス、とかしたい好き、なんだって。
――実際キスされて。
気持ち悪いとかイヤだとかは思わなかったけど……。
ただ、びっくりして。
ホントにびっくりして。
「なんで」ってずっと繰り返す俺に、巣山が笑いかけてくれたときは、何故かほっとした。
俺は巣山が好きだけど、それは友だちとして好きってことで、――恋愛感情ではない。
巣山とはずっと、いい友だちでいたいけど、それはもう無理なのかな?
巣山はなんで俺のこと、友だちとしてでなく、好きになったりしたんだろ。
俺のどこが……キスしたいほど好きなんだ。
告白されてからずっといろいろ考えて、巣山の顔がまともに見れなくて。
その間、巣山は今まで通りに接してくれたから、あれは夢だったんじゃないかと思ったりもした。
今、練習後の部室に二人になって俺はひどく落ち着かない。
“部誌、書き終わるのを待ってるから、一緒にコンビニに行かない?”
水谷の誘いをなぜ断ってしまったんだろう?
“早く帰れよ。お前、最近変だぞ。疲れてんじゃねーの?”
そう言ってくれた阿部に部誌当番、替わってもらっても良かったのに。
「栄口、部誌書けた?手、動いてないみたいだけど」
ぼんやり思いをめぐらせていたところに声をかけられて、椅子から飛び上がるぐらいビックリした。
「す、巣山…、あのっ、この間のことだけど、俺――っ」
慌てふためく俺とは正反対に穏やかに微笑む巣山に、俺はなんて言ったらいいんだ?
ああ、もういっそ、誰かここから俺を連れ出してくれ。
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