treasure(捧げもの)
□signal
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俺から送ってるサイン。
お前にはまだ届いてないのかな?
ねぇ、早く気づいてよ。
好きだから、
お前から抱きしめてほしいんだ。
触れられるのを待っている、
髪も肌も唇も……
全部お前のものなのに。
募る想いは誰のせい?
朝練の後、着替えようとアンダーを脱いだら、ス―って指が背骨を辿っていった。
ざわって肌が粟立って、危うく変な声が出るとこだった。
振り返らなくても分かる、この長い指の持ち主は――。
「みずたに…、なに?」
首だけで振り返ったら、予想に反せず水谷がふにゃぁって笑ってた。
「栄口の背中って綺麗だなぁって思って」
「と、突然なに言い出すんだよ」
「えぇ〜、ずっと思ってたよ。綺麗なラインしてるなぁって。肩甲骨の感じとかもね……俺すごく好き。なんだったけ……肩甲骨は翼の名残を思わせる?」
「知らないよ、そんなの。もう見ないでよ」
俺は慌てて替えのポロシャツを頭から被った。
頬が熱い……。
だって、俺の背中を見る水谷の目……笑ってなかった……気がする。ああいう目をして俺を見るときは……。
ブルッと頭を振って、袖に手を通す。裾を下ろそうとしたところで水谷の声がした。
「栄口、後ろ前になってるよ」
適当に服を掴んで着ようとしたから、前後ろが逆だったらしい。
着直そうともがいてたら、水谷の手が伸びてきて、手伝ってくれた。
脇腹を掠めていった、水谷の指先に呼び起こされる記憶……。
「栄口?どうかした?」
「……なんでもない。えと…ありがと」
「ドウイタシマシテ」
どっちかというと、着せるより脱がせたいけどね、って小声で言われて、肌に触れる水谷の吐息の熱さを思い出した。
水谷の指に、視線に、声に、
心がかき乱される。
今日の俺はどうかしている――。
水谷に触れたい、
触れて欲しい、なんて。
ねぇ、水谷?
俺からサインを送ったら、
受け止めて、応えてくれる?