treasure(捧げもの)
□My moon bunny
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モモカンに用事があるからって半日で練習が終わった土曜日。
やれやれって着替えてたら、「今日、俺ンちに遊びに来ない?」栄口が声をかけてきた。
もちろん俺はふたつ返事で頷いた。栄口から言い出さなかったら、俺が言い出してから。
ウキウキと帰る準備をする俺と対称的に、のろのろと荷物をカバンにつめる栄口。
ロッカーから紙袋を取り出して、じっと見てる。
「栄口?どうかした?」
「あ、ううん…なんでもない」
問いかけに迷いを振り払うように首を振ると、栄口は紙袋をカバンに押し込んでパタンとロッカーを閉めた。
帰り道のコンビニでお菓子を買って、栄口の家へ。
誰もいなかったけど、「ただいまー」って靴を脱ぐ栄口に続いて「お邪魔します」って言って、二階へ上がる。
ベッドに寄りかかって並んで座る。
買ってきたお菓子を食べて、栄口の入れてくれた麦茶を飲んで、楽しくおしゃべり……してるのは俺だけで、栄口はお菓子にも麦茶にもほとんど手をつけていない。
俺の話にも心ここにあらずといった風で「ああ」とか「そう」って、あいづちを打っている。
部室でも様子が変だったし、何かあったのかな。
相談したいことがあって、俺を呼んだとか?
「栄口、何かあったの?」
「別に……」って、何もない顔じゃないよ。
「一人で悩んでないで俺に話して?」
一人で抱え込んじゃうのは栄口の悪い癖だよ。
「俺じゃあ頼りないかも知れないけど、栄口の力にならせて」
ぎゅっと手を握って言うと、戸惑いながら栄口は口を開いた。
「……水谷、ちょっと後ろを向いてて。俺がいいって言うまで振り向かないでね」
「う、うん」
ガサゴソとたぶん…紙袋を開ける音がする。
なんだろう?
「もういいよ。こっち向いて」って声に振り返る。