treasure(捧げもの)
□Over The Rainbow
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出合いは、
時と場所を選ばずにやって来る。
恋は、
するものじゃなくて、
落ちるものだと思い知った。
15歳の春。
灰色の受験シーズンを終えて、晴れて入学した工業高校は、分かってはいたことだけど、女子生徒は2割にも満たなくて、ほとんど男子校だった。
(朝、教室の戸を開けると一面真っ黒。学ラン着た野郎ばかりで嫌になるよ)
部活は中学のときと同じ野球部に入った。今年、同好会から部に格上げされたばかりの野球部は、兼部している先輩も多いから、運動部の割りにゆる〜い雰囲気で、俺は気にいってる。
GWが終わってすぐ、近くの西浦高校と練習試合をした。
まず、カントクが若い女ってことに驚いた。
西浦も新設の野球部だから、いい勝負だろうと思っていたら、予想以上に手強くてさらに驚いた。
でも、一番驚いたのは
君の存在。
7回の表、二死一塁。
右ももに当たったデッドボール。
「すみません!大丈夫ですかっ?」
冷却スプレー持って走って来てくれた君が天使に見えた。
優しい茶色の髪と瞳。少し高めの、耳に心地よく響く声。
対戦相手の二塁手は眉を下げて、謝罪と俺を気遣う言葉をくれた。
「あ、え〜と、そんな…痛くないから、大丈夫だよ?」
安心させるようにふにゃ、と笑いかけた。
ーーいや、ホントはメチャクチャ痛かったけどね。
(後で聞いたら、それまでは涙目になってヒィヒィ言ってたらしいけど……。俺はその辺の記憶があやふやだ)
けど、痛みなんて君を目にしたら、吹っ飛んだよ。
「良かったぁ。えと、……がんばってね」
ほんの少し頬を染めて、首を傾ける仕草に、かわいー、なんて思ったりした。
ある晴れた、5月の土曜日。
花開くような笑顔の君に、
あっけないほど簡単に心を奪われた。
試合が終わった後、話しかけたかったけど、一点差で負けて悔しがる阿倍に、首根っこを掴まれてズルズルと引きずるように引き揚げさせられた。
「おら、クソレ!帰って練習スッぞ」
いや、確かにレフトフライ落としちゃったけどさー、ヒットだって打ったんだよ。
(残念ながら、得点には結びつかなかったけどね)
最後に振り返って見ると、君はチームメイトに肩を抱かれて笑っていた。
あのセンターと仲がいいんだな。
クシャクシャと頭を撫でられて、嬉しそうにしてる。
胸にチリリと痛みが走る。
俺だって君をたくさん笑わせてあげるから。
だから、こっちを見て。
その瞳に俺を映して。
柔らかい声で俺の名前を呼んでよ。
ああ、ヤバい。
なんだよ、男相手にこの気持ちは。
People say that fall in love.
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