parallel
□君が大人になったなら
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見知らぬ街の夕暮れ。
ふいに漂ってきた花の香りに思わず足を止めた。
風が梢を揺らして、懐かしい記憶が甦る。
放課後の教室、二人だけの補習授業。
基本から分かってない俺の質問に根気よく答えてくれて、
くだらない冗談にも笑ってくれる横顔が好きだった。
開け放たれた窓から聴こえてくる、ブラスバンド部のロングトーン。
だらしなく開けていたシャツのボタンを留めてくれた細い指先。
伏せた睫毛の長さに目を逸らした。
風に揺れて、甘く香る柔らかなそうな髪。
「好きだよ」って言ったら、どんな顔をするかな。
鼓動がやけに大きく聞こえて、胸が切ない痛みを訴えていた。
今はもう、
過ぎ去った日の想い出。