parallel
□Holy Night~in the dark~
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出迎えてくれた水谷は伸びた髪のせいか、大人びて見えた。
それに……なんだか痩せたみたいだ。
「雪、降ってたんだ?」
俺の髪や肩に降り積もる雪を見て、どおりで寒いと思ったと呟いた。
「栄口、寒かったでしょ?こんな日にごめんね」
「いや、それほどでも…大丈夫だよ」
雪を払いながら答えると、温まるものでも飲もうかって言って、スタスタとキッチンへ消えた。
目も合わせてもらえなくて、じわっと視界が滲む。
いつもみたいにふにゃんとした笑顔を見られるとは思っていなかったけど……でも、こんなのって……。
唇を噛み締めて一人取り残された玄関で靴を脱いだ。
ワンルームの部屋に、パイプベッドとコンポ、CDラック、パソコン
、コタツ。
模様替えしたのかな。記憶と家具の配置が違うような気がするし、部屋全体がすっきりと片付いてる。
コタツの上にちっちゃなクリスマスツリーとピザとカーネルおじさんのチキンの箱。
コンポから流れてるのはオルゴールのクリスマスソング。
座ってて、と言われコタツに入って待っていると、水谷が持ってきてくれた"温まるもの"は、赤ワインだった。
いつもだったらココアかミルクティーなのに、クリスマスだからかな。
「これは口当たりいいから、栄口でも飲めるよ」
メリークリスマス、と言って合わされたグラスはチンッと軽やかな音がした。
ワインなんて飲むの初めてでおずおずとグラスに口をつける。
ほわって口の中に香りが広がって鼻孔へと抜けていく。
渋味の少ない甘いテイストで、確かに飲みやすい。飲むとお腹が熱くなって、体に血が巡っていくのがリアルに感じられた。
コクンともう一口飲んで、何かお腹に食べ物を入れてから飲んだほうがいいんじゃないかって思って、グラスを置こうとしたら「栄口のためにソムリエのいるお店で選んで買って来たんだけど、気に入らなかった?」って言われてもう一口飲んだ。
「美味しいよ、水谷。体もあたたまった」
「そう?良かった。遠慮しないで飲んでね」
ようやく目を合わせて笑ってくれた。
「う、うん」
わざわざ俺のためにソムリエに選んでもらったってことは、水谷に嫌われた訳ではないんだよな……。
そう思ったら心が軽くなって、俺は促されるままワインをまた口にした。