parallel


□Bright morning
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そろそろ起きろよ、と言われても冬の朝、ぬくぬくとした布団からそう簡単に起きて出られる訳もなく、俺はモゾモゾと体を動かして寝返りを打った。


「起きろってば、水谷」


男にしては高い、俺の大好きなやわらかく優しい声と共にゆさゆさと体を揺すられる。


「う…ん、起きる……から」


そう答えたものの、一向に起き上がる気配を見せない俺に、「もう〜、今日は買い出しに行くんだろ、早く起きないとおいてっちゃうぞ」って呆れた声がして、布団の上から尻をペシリと叩かれた。

もちろん、全然痛くなんかない。

けど、万に一つでも置いていかれては堪らないので、眠い目をゴシゴシと擦って体を起こした。


「おはよ。起きた?」


朝の光を浴びて穏やかな微笑みを浮かべる栄口からは、昨夜ベッドの上で俺に見せてくれた、艶やかな表情はもう見いだせなかった。

けれど、首筋に残る薄紅の痕が匂い立つような色香を放っていて、俺は栄口の柔らかな頬に指先を滑らせた。


「起きたから……キスして」


は?と呟いた唇。


ーー昨日はわななくように震えながら、熱い吐息をこぼし、何度も何度も俺の名を呼んでくれた。

その唇を掠め取るようなキスをした。


「ーーキスしてって、お前からしてんじゃん」


だって、栄口が可愛いくて待ちきれなかったんだ、と言えば耳の縁がうっすらと染まった。

昨日はあれほど二人で溶け合ったというのに、触れるだけのキスでこんな初々しい反応を見せてくれる栄口は本当に可愛い。

今度は栄口からしてよって、目を瞑れば、そっと触れて…ゆっくりと離れていく唇。

目を開けると、ちょうど目蓋を上げた栄口と目が合ったーー。


「さかえぐち……」


後頭部に手をやり、引き寄せる。再び目蓋が下ろされたーー。

ついばむような口づけを繰り返し、しっとりと濡れた唇の隙間から舌を割り込ませる。

栄口の舌は優しく、俺の舌を包み込むように迎えてくれた。

キスが好きな栄口を喜ばせたくて、ねっとりと舌を絡めて、溢れてくる唾液ごと吸い上げる。

クチュクチュと濡れた音が鼓膜を震わせて、体の奥深くに到達してツキンとした疼くような痛みを呼び覚ます。

俺は栄口の舌先を甘く噛んでは離し、噛んでは離し、鼻に抜ける声を上げさせた。


「ふぁ…はっ…」


唇を離すーー。濡れた唇を閉じることも忘れて、とろんと俺を見る栄口の潤んだ茶色の目。

顎に垂れた一筋の唾液を舌で舐め取ると、ふるっと体を震わせた。


「みずた…に……」


後頭部に添えていた手を背中に移して抱き寄せる。


「好きだよ、ゆーと」


もう何度言ったか分からない言葉を俺は死ぬまで繰り返すんだろう。


「俺も…好きだよ、ふみき」


君がふわりと微笑んで応えてくれるから。
 


 
 
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