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□酒は飲んでも飲まれるな
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「巣山ぁ、このお酒に美味しいねぇ」
「栄口、俺の秘蔵の日本酒を水みたいに飲むなって」
「え〜、だってこれ、美味しいんだもん。口当たりがなめらかで、甘いのに後味がスッキリしてて。まさに芳水」
「だから滅多に手に入らない酒なんだって。もっとゆっくり味わって飲めって」
「お酒は眺めるもんじゃないよ〜。飲むもんだよ〜。飲まなきゃ酔えないんだから、巣山も遠慮しないで飲んで飲んで」
「だーかーらー、俺の秘蔵の酒だって……。栄口、お前飲みすぎだぞ。理性残ってる?」
「残ってるよ、失礼な。
こないだ水谷と花井ん家で飲んだときなんか、起きたら花井の妹の中学のときの制服着てて自分でもビックリしたけど」
「ブッ」
「汚いなぁ。吹くなよ」
「な、なんで、」
「ん〜?何でだっけ。よく覚えてないなぁ。
水谷が写メ撮ってたんだけど、阿部に見つかってケータイ折られてた」
「ゲッ」
「もう外で飲むなって、三ヶ月も飲み会に参加禁止だよ。今も門限9時だし。信じられないよ」
「さ、栄口、もう9時過ぎてっけど、帰んなくていいのか?」
「巣山のとこで飲むなら10時までいいって。
あーでも、9時に1回電話しろって言ってたなぁ。
実験も最終段階って言ってたから、電話なんて出てる暇ないんじゃないの。
今ごろ大学の実験室で眉間にシワ寄せてるよ」
「いや、電話しろ栄口。頼むから」
「え〜〜、……あ、電話だ。阿部かな?
――もしもし、あべぇ?
うんそう、まだ巣山のとこ。
んー、大丈夫。そんなに飲んでないよ。
ごめんねぇ、電話こっちからかけられなくて。
巣山も独り暮らしで淋しいんだよ。
阿部が羨ましいって言ってた。
あー、ないってそんなこと。心配性だなぁ。
……なんか、秘蔵のお酒を出してくれたよ?
アルコール度数高いから、ちょっと酔っちゃった。
今日は巣山のとこに泊めてもらおうかなぁ。
どうせ、阿部、泊りになるんでしょ?
え?ホント?――分かった、待ってる。
――ばか、なに言ってんの。
――阿部だけだよ。
うん、…俺も…好き。じゃ、後でね」
「――栄口、俺の存在忘れてただろ」
「え、巣山いたの?」
「ここ、俺の部屋なんだけど……」
「あはは、そうだったね。――なんか、阿部が今日はもう実験切り上げて迎えに来るって」
「……(愛されてるな、栄口)」
「ふぁ〜、俺眠くなってきたぁ。巣山、ちょっとベッド貸して。んで、阿部が来たら起こして」
「わ、待て、栄口。ジーパン脱いで俺のベッドに潜り込むなっ」
「うるひゃいなー。寝るときはこれが楽でいーの。あ、阿部から伝言。
『俺の信用を裏切ったら容赦しねー』って。物騒だねぇ」
「――誰のせいだよ。はぁ〜。俺まで敵認定かよ。――飲も」
……………………
栄口くんはお酒に弱い設定が多いので、酒豪栄口くんを目指してみましたが、ガッツリ飲んでガッツリ酔ってしまいました(^_^;)
結論、栄口くんはほろ酔いのほうが可愛くていいと思います。
そして、巣山が苦労性の某主将のようになっているのは気のせいだと思います。
栄口くんと阿部は大学生でルームシェアという名の同棲中です。
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