short・その他
□Mission
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「お前、隆也と寝てんの?」
声をかけたのは単純に興味からだった。
思い出すのは中学のころのアイツ。
言いたい放題で生意気な態度を取るくせに、アザだらけの体で懸命に「元希さん、元希さん」と俺を追いかけてた。
負けず嫌いで涙脆くて、真っ直ぐな強い瞳で俺を見てた。
あの隆也が今はコイツを抱いてるのか。
ーーどんなふうに?
単純な興味、あるいは好奇心のままに訊いた俺に細い体をしたソイツは、そっけなく答えた。
「別に…」
お、なんか、印象が違うな。
もっと愛想いいヤツじゃなかったか?
にこにこ笑顔はどこにいったんだよ。
「"別に"ってことはないだろ。あいつと寝てんじゃねーの?」
「……別にそんなのどうでもいいでしょ」
否定はしねぇんだ。隆也と寝てないって。
「どうでもいいってのは、俺にとって、ってことか?それとも……」
「あなたにとっても、俺にも、阿部にとっても、どうでもいいことだって意味です」
デキの悪い生徒に教えるようにゆっくりハッキリ言われた。
隆也と寝るのはどーでもいいことかよ。
ーー本当に?
「用がないならもう帰ります」
「あるよ。今できた」
隆也のことで大事な話があるつったら、練習サボって俺の家までついて来たくせに。
可愛くないな。
そういう奴はイジメてやりたくなるだろ。
「なんですか?」
早く済ませてくださいと言いたげな、男にしては高く澄んだ声。
ーー啼かせがいがありそうじゃないか。
「どーでもいいことしよ、俺と」
つまり俺と寝よ。
「……意味が分かりません」
「いいんだよ。意味なんてないんだから。分かんなくて当たり前。何、お前、隆也と寝ながら難しいことでも考えてんのかよ」
鳩が豆鉄砲でもくらった顔した。
「アイツ、下手なんじゃね?相手にそんな余裕与えるなんて。考えさせんじゃなくて、感じさせてなんぼだろ」
え、いや…下手って訳じゃないと思います、つって頬を染める様子は、なかなか可愛い。
コイツ……緊張してたのか?
こっちが素か?
……寝てみりゃ分かるか。
「俺と隆也、比べてみれば?」
顎に指をかけて上を向かせると、緩みかけていた唇が固く結ばれた。
なんだ、笑った顔見せろよ。
笑ったら、きっともっと可愛いんじゃねーの、お前。