short・その他


□チョコレートの弾丸はハートを撃ち抜くか
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「バァン!」


親指と人指し指でL字を作って「ただいま〜」と能天気に帰ってきた浜田を撃つ。


「あれ、泉、来てたの?」

「死ねよ。お前今俺に撃たれたんだから」

「いきなり撃つなよ〜」


ガサゴソとスーパーの袋と紙袋を持って台所に消えていく背中にもう一発。

Bang!


「今日は大したモン作ってやれないぞー。パンと牛乳とメンチカツ一個しか買って来てねぇし。
ーーあ、昨日の残りの生姜焼きある。後は……玉子とキャベツか……」


冷蔵庫を漁る気配に舌打ち。


「本気で撃ってンのに、なんで死なねーんだ」

「冗談でも本気でも、指鉄砲に殺傷能力はないからじゃね?」

「殺意込めてンのに、残念過ぎるな」

「機嫌悪いね」

どうしたんだ?と問いかけるように、戻ってきた浜田に髪の毛をワシャワシャされる。

分かってないのに分かってる感がウザイ。


「すぐ飯作ってやるからこれでも食って待ってて」


コタツの上に紙袋が置かれた。


「あん?」

「バレンタインのチョコ。学校で貰ったのと、バイト先で貰ったのと」

「けっこう貰ってるんだ?」


紙袋の中を除き見ると、華やかなラッピングを施されたチョコが4つ。中には手作りとおぼしき物もある。

昼休みに呼び出されて渡されていた物がそこにあるのか、あったとしてもどれなのか、俺には知るよしもない。


「義理ばっかだけどな。泉は幾つ貰ったの?」


ーー例え義理だとしても、浜田は嬉しそうに笑ってチョコを受け取っていた。


「本命からのひとつ」

「え、ウソ。マジで?」

「ーーしか要らねぇから断った」

「男前だな。惚れるわ」

「抜かせ」


「ま、好きなの食えよ」エプロンを付けてフライパンを握る浜田の心臓を撃ち抜く弾丸を持たない俺は、銃口を自分に向ける。



本気で撃っても撃っても甦る恋心にどうやってトドメを刺そうか。



* * *

突発的バレンタイン妄想。しかも浜←泉。

密かに浜→←泉でもいいかな、と思っておりますが。

泉は受けでも男前なのがいいと思う。


→オマケ(会話文)


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