short・水栄
□Sweet lovers3
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自販機でジュースを買った帰り、廊下の向こうに栄口を見つけた。
「さかえぐち〜!」
叫んだ俺に回りの生徒の視線が集まるけど、全然気にならない。
俺に気づいた栄口はパッと笑顔になって、それから顔を赤くして人差し指を立てて唇に当てると、急ぎ足でこっちに向かってきてくれた。
俺ももちろん笑顔で栄口に駆け寄った。
朝練がなかったから、栄口に会うのが今日はこれが初めてだ。
「さかえぐちっ」
「もう、水谷、おっきな声で呼ばないでよ」
軽く睨んでくるのは照れ隠し。
それも可愛いなぁ、なんて思っている俺の頬はだらしなく緩んでしまう。
「ごめんごめん。……次、移動?」
「うん、実験室。…水谷は自販機?」
「そ、飲む?」
「なに買ったの?」
「カルピス」
差し出した紙コップを受け取って、栄口が口をつけたところに背後から飛びついてきた人影。
「さっかえぐち〜!」
「ぶはっ」
「田島!」
後ろから飛びつかれた衝撃で紙コップの中身の大半がこぼれて、白い液体が栄口の口元から首、胸元へと飛び散った。
「……っ」
「わりぃ、栄口。大丈夫かぁ?」
悪びれず謝る田島に、栄口が「大丈夫」と答えて手で口元を拭う。
むせたせいで涙目になってるし、顎から首にカルピスが伝い落ちてるし……なんていうか、その……。
「おお、なんかえろいぞ、栄口」
「なっ」
真っ赤になって絶句する栄口を自分の背中に隠す。
「田島、栄口に変なこと言わないでよ!」
「だってさぁ…」
「どうかしたのか?」
通りかかった花井が騒ぐ俺たちに足を止めた。
「あ、花井ー。カルピス被った栄口がえろいかどうかって話を今……」
「は?」
「いやいやいやいや!花井なんでもないからねっ。栄口、ちょっと来て!」
これ以上こんな色っぽい栄口を他の奴に見せるわけにはいかない。
俺は栄口の手を引っ張ると廊下を駆け出した。
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