short・水栄


□Sweet lovers4
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"ねぇ、見て見て!栄口"


1組に遊びにきた水谷が、開口一番べぇって舌を出す。


うわ、なにその色……。


水谷の舌は見事なまでに毒々しいミドリ色に染まっていた。


"クラスの奴にもらったメロンソーダ味の飴を舐めてたらこうなった。すごいよね、外国の飴って。"

"阿部ったら酷いんだよ、カビはえてるみてぇとか言うの。"


う~ん、阿部の言うことも分からないでもないな。

地球外生命体みたいな舌の色だ。


"栄口までそんなこと言うの?ひどいよ。泣いちゃうからねっ。"


悪かったよ。謝るから、ウソ泣きやめろ。みんな見てるだろ。


"じゃ、みんなが見てないところに行こう。"


え、おい、待てよ。

引っ張っるなって。

どこ行くんだよ。




で、連れて来られたのは、特別教室棟のトイレの個室。

確かに誰も見てないよ。うん。

けどなんで俺が水谷とトイレの個室にこもらなきゃいけないのさ!


水谷は俺の両肩をつかんで逃げられないようにすると、



"舌、舐めて。"


だって。


は?お前、なに言ってんの。


"栄口が舐めてくれたら、ミドリ色取れるかも。だから……舐めて?"


……口、ゆすいでみたら?

別に、舌が緑でも害はないし。

そのうち取れるよ。


"地球外生命体って言ったの栄口だよ。俺、傷ついたんだからね。"


だから悪かったよ。それは謝るから。


"悪いと思うんなら、舐めてキレイにして?"

"……でないと、栄口の好きなとこ、もう舐めてあげないから。"


耳に唇をくっつけて囁やかれて、ゾクリとした。


ここはトイレだっての、しっかりしろ、俺。


"ほら、早く。――舐めてくれるまで、ここから出してあげないからね。授業始まっちゃうよ?"


両肩をつかんでいた手が腰に回される。


お前……、なに急にスイッチ入ってんだよ。


"さかえぐち?"


促すように、唇を舐められる。



栗色の瞳に囚えられて、

ああ、もう逃げられない。



分かったよ。

でも、恥ずかしいから、目、つぶって。


んっ、て目をつぶって舌を出す水谷。


俺は覚悟を決めて舌を伸ばすと、水谷のミドリに染まったそれに触れた。

ビリって電流を流されたみたいに、舌先に痺れが走る。

何かしてくるかと思ったけど、水谷は舌を出したきり、じっとしてる。

俺はペロンと水谷の舌を舐めた……。

メロンソーダの味かは分からないけど、ほんのり甘い……。

俺はペロペロと舌を動かして水谷の少しざらつく舌を舐め始めた……。



んっ……。



水谷の舌を舐めてるだけなのに、俺の中で高まってざわめきだす欲望。


水谷の温かく濡れた舌……


いつもなら、歯列を割って入ってきた舌は、


ときに強引に、

ときに細やかに…

俺の口の中を舐め回して……、


器用に俺の舌に絡みついてくるのに……。



っふ……。



いつものキスを思い出すと躯が震えた。


水谷の手にトンと肩を叩かれて、いつの間にか閉じてしまっていた目を開ける。


"もういいよ"


舌が引かれる。


俺は思わず水谷の唇の端に垂れた唾液を舐めとった。


ーーもっと舐めてても良かったのに……。


"ありがと"って俺の頭をちょっとだけ撫でて、水谷は個室の戸を開けて出て行こうとする。



……みずたに。



シャツを掴んだ俺の手を見て、水谷がクスって笑う。


"そんな顔しないの"


俺の頬をすーっと撫でる水谷の指先にゾクンとした。


そんな顔ってどんなだよ。


"もの欲しそうな顔"

やっ

耳元で囁かれて、変な声が漏れた。


"早くスイッチ切り換えて、栄口。そんな艶っぽい顔、他の奴に見せたくないから"


なにそのワガママ。

俺のスイッチを入れておいて、自分のはサッサと切るなんて水谷はズルい。


人がいないのを確認した水谷について個室を出る。


"ここは意外と穴場だね"

嫌だよ、俺……トイレなんて。


手洗い場でバシャバシャと手を洗ってなんとか正気に戻る。

ホントは顔も洗ってしまいたかったけど、そんなとこ水谷に見せたくない。


"ごめんね?"


水谷のばか。


"ね、今度は書庫でしようか"


は?

お前、なに言ってんの?


"これ、おわびにあげる"


渡されたのは、飴の包み。


"栄口の分も貰っといたから。好きでしょ、イチゴ味"

"それ舐めたら次の休み時間、図書室に来てね。書庫なら人がいないから"

"きっと舌が真っ赤になってるから、俺が舐めてキレイにしてあげる"

"あ、ちゃんと俺のこと考えながらその飴舐めてね"



お前、まだスイッチ入ってんの?


そんなこと言われたら、俺のスイッチだって切れないだろ。


手の平の飴玉をぎゅっと握りしめる。


次の休み時間、図書室の書庫…。
 


…………………………

栄口くん、行っちゃダメぇーー。


だんだんあやしくなってきたSweet lovers のお二人さんです。

まぁ、パターンとしてはSweet lovers 3とほぼ同じなんですが、こっちのほうが水谷に余裕がある分やらしい気がします。(あくまで当サイト比)

もう一つ、阿栄で飴にまつわるお話を思いついたので、よろしければshort・阿栄をご覧ください。


あ、スイッチっていうのは……



………ヤる気スイッチのことです……。


ご、ごめんなさい。

  
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