short・水栄
□Strawberry Shortcakes Forever
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冬生まれだからといって、寒さに強い訳ではなく(むしろ寒いのなんて大嫌い)、かといって暑さに強い訳でもなかったりする俺のことを、同じく冬生まれで、寒さにも暑さにも強い変人な阿部は、単なるヘタレというけれど、寒いのも暑いのも苦手なものはしょうがない。
それでも、息が白くなる季節の始まりと共に朝練に遅刻ギリギリで駆け込むことが多くなっていたから、さすがにこれじゃダメだろうと、新年一発目の朝練の今日はがんばって早起きして一番乗りを狙って学校へとチャリをこいだ。
今日の俺、いや今年の俺はひと味違うんだからね。
俺の後から来た阿部に「副キャプが部員より遅く来るってたるんでるんじゃないの〜」って言ってやるんだ。
学校に着いて、駐輪場に向かうと先客がいるのが見えた。
見慣れない白のダウンを着てるけど、あの茶色の頭は栄口だ。
短い髪に隠れることなくむき出しになった耳が真っ赤になってて、寒そうだなぁ、痛くないのかなぁって思うけど、しゃきっと背筋を伸ばした姿は、冬の張りつめた空気の中で凜として綺麗だった。
(鼻先までマフラーに埋めた俺とは大違いだ)
今年一番に会う部の奴が栄口だなんてついてる。
大晦日と三が日は練習がなくって、それはそれでのんびりできていいんだけど、栄口と会えない日々、というのは予想以上に長かった。
お正月休みにどこかに遊びに行こうよって誘ったけど、普段家の手伝いできてないし(俺は栄口は充分家の手伝いしてると思うけど)、弟と遊んでやりたいから、ごめんねって断られた。(家族想いの栄口らしいよね)
元旦に電話したけど、栄口は親戚の家にいるとかであんまり話せなくて、メールのやり取りは何回かしたけど、なんか俺はつまんなくて、早く部活が始まらないかなーって思ってた。
「おはよ!早いね、栄口」
って、いつもどおりに声をかけて、あ、違った、"あけましておめでとうございます"だったって、もう一回挨拶し直そうとしたら、にこっと笑った栄口が、あけましておめでとう、より先に「誕生日おめでとう、水谷」って言ってくれた。
「誕生日、覚えててくれたんだ……」
「覚えてるよぉ。メールしようと思ったけど、直接言いたくて。今日、練習早く終わるから、帰りにケーキ食べに行かない?奢るよ。あ、男二人でケーキとかって嫌だったらーー」
そんなことないって、ぶんぶん首を振って、栄口の台詞を全力で否定する。
「行くっ!栄口と二人だったら、ブライダルコーディネーターのとこだって行く!」
ブライダルコーディネーターってなんだよって、苦笑する栄口に正月に見たスペシャルドラマから得た知識を披露すると、「ふうん」って淋しそうな顔をして斜め下に視線を落としてしてしまった。