short・水栄


□Life is ……?
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叶わぬ恋の一つや二つあったほうが人生は美しいんだって、アップテンポの曲に合わせて男性ボーカルが歌ってる。


「負け惜しみじゃないのかなぁ……」


ハンバーガー屋でフライドポテトを摘まみながら思わず呟くと、

向かいの席に座ってシェークを飲んでいた栄口が「なんのこと?」って目で返事を寄越した。


「今かかってる曲、"叶わない恋があったほうが人生は美しい"んだって」


俺の言葉に栄口はストローから唇を離すと、流れてる曲に耳を傾けた。

生憎と曲は間奏に入って、キーボードが高音部で技巧的に奏でられている。

何となく話すのを止めて二人で二番が始まるのを待つ。


(けっこう間奏長いな……)


手にしたポテトを栄口の口元に運ぶ。

ふやけて途中からくたんと曲がってしまってるけど、栄口は「サンキュ」と首を横に傾けるとパクリとポテトを口にくわえた。

手を使わずに口だけをモグモグと動かして食べる様子が可愛くて、指を離すのが一瞬遅れた。


もっと短いポテトを選べば良かった……なんて。


(あの唇に触れたら俺はどうなってしまうんだろう……)




間奏が終わって再び歌声が流れ始めたけど、俺は栄口の唇についた小さな塩の粒が気になって仕方がなかった。

視線に気づいたのか無意識なのか、頬杖ついてた栄口が小さな赤い舌でペロリと唇を舐める。


ズキンと疼くのは胸だけじゃない。


"例え触れられなくても 出会えないよりはずっといい"


高らかにBメロを歌い上げられても、俺には到底そんなふうには思えなかった。


(出会って、恋をして、触れ合うからこそ人生って美しいんじゃないの?)


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