short・ 阿栄
□Sweet heart 3
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はふっと息をついた栄口が「もう無理……」と訴えてきた。
「もう少しがんばれよ」と言うと、口に含み直して舌を動かし始めたけど、やがて諦めたように涙目で見上げてきた。
きっと、顎も舌もだるくて仕方がないんだろう。
「……あべぇ。もう、やら……」
ほおばったまましゃべるなって、ろれつが回ってなくて可愛いだろ。
「お前が欲しいっつったんだろ。最後まで舐めろよ」
涙をためて口を動かす栄口をもう少し見ていたいし。
「う……、だってこんなにおっきいとは思わなかったんだもん」
ちゅぷって、口から出される唾液で濡れたピンク色の………
「それにこの味、好きじゃなかったんだもん。阿部、もったいないから変わりに舐めてよ」
「いらねぇよ。俺、チュッパチャップスは好きじゃねーし。お前が『わーい、新発売・ラズベリーヨーグルトチーズケーキ味だぁ』って飛びついたんだろ」
「酸味が強すぎるんだよぉ。もっと甘かったら良かったのに。なかなか減らないしさ。……阿部がいらないなら、水谷にあげよっかな」
おい、ちょっと待て。
それはやめろ。間接キスどころじゃないだろ。
「……いる。俺によこせ」
「いいの?」
「おう」
「じゃ、はい。あーん」
小首を傾げて差し出してくる。
「……」
「あ、水谷がきた」
「……あーん」
俺は仕方なく口を開けてあめ玉をくわえた。
酸味が強いどころか俺には激甘だ。喉をかきむしりたくなるくらいの甘さだ。
ぶすっとしゃぶっていると、さっきまでの涙目はどこへやら、にこにこした栄口が「舌が疲れたら代わってあげるから、順番に舐めよ」って言ってきたから、俺はすかさず口から甘ったるい固まりを引き抜いて栄口の口に突っ込んでやった。
「もうっ、早いって」
阿部のおーぼー!とかなんとか言ってる栄口に「俺の舐めろより楽だろ」って耳元でささやいたら、真っ赤になって、でもそれからは最後までずっと一人で舐めきった。
なんだ、やればできんじゃねーか。
…………………
読んでいただいた方に楽しんでもらいたいと思って作った拍手お礼文でした。
『Sweet heart 2』より先にこっちのお話を考えたのですが、番号が後になってしまいました。