treasure(捧げもの)


□君に降る雪
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「栄口、ーーおいで」


腕を広げて微笑むと、顔を上げた栄口が嫌々と首を振った。


ーーかわいいなぁ。

あぁ、早く抱きしめてキスしたい。


「これが最後だよ。ーー俺たち別れるんでしょ?」


ビクンと怯えたように俺を見る、泣き濡れた茶色の瞳に優しく言い聞かせる。


「おいでよ、ゆーと」


ふぇ、って泣き声をあげて胸にすがりつく温もり。


「みずたに……」


キスしようとするとボタボタと涙をこぼして顔をそむけた。


「お別れのキスしよ?」

「や、いや…、みずたに…っ」


別れがイヤなのか、キスがイヤなのかーー、


聞くまでもないね。


よしよしと背中を撫でてやると、涙に濡れた頬を甘えるように俺の頬に擦り付けてきた。


「みったに……」


嗚咽しながらキスをねだられて、


ーー想いのままに与える。



「ふぁ、あっ……」


そう簡単に離れていけるようなキスを、抱きかたを、この2年間俺はしてこなかったよ。


「ぁ…、ふみっき」


うなじの痕をきつく吸い上げる。


栄口はね、俺のものなんだから。

勝手に別れを決めちゃダメ。


シャツの裾から忍び込んだ指先で、栄口の体に熱を灯していく。

別れ話なんてこんな凍える日に切り出すものじゃないよ。


温もり、離せないでしょ?

欲しいよね?冷たい肌を体内から暖めてくれるもの。


「あぁ……」 


吐息を朱に染めて、甘く乱れて堕ちていくーー栄口の哀しい決意。

 

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