treasure(捧げもの)
□Would you like something to drink?
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こくり、ミルクティーを口にする。
熱すぎずぬるすぎず、適温。
俺はミルクティーを含んだまま阿部の唇に唇を重ねた……。
「……ん」
ゆっくりと惜しむように温かく甘い液体を阿部の口の中に注ぎ込む。
「ふっ、ぁ…」
お互いの口の中からミルクティーがなくなっても俺と阿部の唇は離れることなく……。
阿部の差し入れてきた舌を俺は悦んで迎えていた。
ーーより深く激しく舌を絡ませ、吸い合ってーー。
すごく…気持ちが良くて止まらない……。
「はぁっ、んぅ…」
息が苦しくなって指先が痺れて、ミルクティーの缶が俺の手から滑り落ちる。
カァン、カラカラ……という音に我に返った。
「あっ、」
目を開けると、アスファルトを転がる缶とそこから流れ出る液体。
「ごめ…っ…」
慌てて缶を拾おうとしたら、クラリきてと足元がふらついて、阿部の片手に腰を支えられた。
「大丈夫かよ?」
「う、ん。ごめん。ミルクティー、かからなかった?」
「俺のことより、お前は?」
「……大丈夫、たぶん」
制服がわりのスラックスの裾に少しは跳ねたかも知れないけど、熱くもないし。
「これもう飲めねぇな」かがみ込んで缶を拾い上げると、阿部はわずかに残った中身をトプトプと撒いて、ゴミ箱に頬り投げた。
「ごめんね、せっかく交換してくれたのに」
「いや、俺のせいだろ。ーーお前の舌なら甘すぎでも良くて……止められなかった」
「し、知らな…っ」
「こっち飲む?もうそんなに冷たくねぇだろ」
差し出されたミルクティーは適度に冷たくて、長いキスの余韻を残す、火照った体に気持ちが良かった。
いくら人気がないとはいえ、公園の自販機の前であんなキスを貪るなんて、二人ともどうかしている……。
頭を冷やせ、俺。
「ありがと」と缶を返すと、喉が乾いていたのか、阿部は普段飲んでる無糖のコーヒーからすると恐ろしく甘い筈のミルクティーを喉を反らしてゴクゴクと飲んだ。
上下する阿部の喉仏から目を逸らせない……。
「もっと飲みたい?」
視線に気づかれて低く囁かれて、
ミルクティーより阿部の唾液を飲みたがっている自分がいた。
「あべ…」
「栄口、」
片手でグイッと腰を引き寄せられて、密着した下半身に阿部の熱を感じて、ーーー理性が溶けた。
「欲しい…もっと……飲ませて」
目を閉じてねだると、満足ゆくまで与えてくれたーー。
* * *
遅くなってしまったのですが、相互サイト様の"2684号"北本わるむさまのお誕生日に捧げる阿栄のお話です。
人肌恋しくなる秋ってことで、甘い阿栄を目指したのですが……。
北本さまのね、可愛いらしい誘い受けの栄口くん、とか、しれっと殺し文句言っちゃう阿部とか大好きなんです。
オフでもご活躍のようですが、お体に気をつけて創作活動をつづけてくださいね!
お誕生日おめでとうございました\(^o^)/
* * *
(このお話の"自販機のボタンを押し間違えて、取り替えっこ"というネタは去年の冬の"栄口くん総受け拍手お礼文"の泉編を書いてたとき思いついたものだったりします)
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