treasure(頂きもの)
□お誕生日記念巣栄
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東北に行きたい、という話をしていた。二人でまとまった休みを取り、1ヶ月後に迫ったその日を楽しみにしている。しかし、まだ行く場所は決まっていない。一番近い福島か、東北のロンドンと呼ばれる仙台率いる宮城か。
「せっかく行くんだから東北らしさを味わいたいよね」
東北らしさと言えば雪か三大祭り。しかし行くのは六月である。雪はもちろんのこと、夏に行われる三大祭りとも縁はない。
「うーん」
「いや、何て言うか…自然をたくさん味わいたいよね…」
「そういうことな」
日々結構ビルに囲まれて過ごしているし、自然は東北の魅力の一つだろう。
東北の旅行誌を見ながら栄口は「あ」と声をあげた。覗き込むとそれは山形のページ。
「山形?」
「う、うん…ほら!温泉とか色々あるみたいだよ。山形はお米も美味しいしね」
「…あ」
「え?…あっ!!」
気を逸らして、そのうちに雑誌を奪い取る。そのページには「さくらんぼ狩り」の記載がされていた。さくらんぼ?ああそっか。こいつ…
「俺が果物苦手だから、我慢してんのか」
「…そんな、こと」
「お前さくらんぼ大好きだもんな」
「…」
「行こうぜ、山形。俺ガキん時教科書で見た庄内平野見たい」
「!」
ぱっと顔を上げた彼の頬をぎゅっと摘む。まだあどけない顔立ちは学校の先生だなんて思えないくらいだ。でも教壇に立つ彼はきっと…格好良いんだろうな。
「ひひゃいしゅやま」
「気、遣うなって。行きたいとこ行こう。山形のさくらんぼ前食ったことあるけど、甘くて大きかったな」
「…」
「さくらんぼ狩り、いっぺんやってみたかったし」
「…ほんと?」
「嘘が苦手なことくらい、分かるだろ」
「うん」
栄口は俺に抱きついてきた。頭をぽんっと撫でてやった。空いてる手で山形のページに付箋を貼る。
自分で狩ったこともあってか、山形で食べたさくらんぼは本当にうまくて好きな食べ物ランキングの上位に入ることになることを、俺と栄口はまだ知らない。
***
加藤さまのお誕生日には何も差し上げられなかった百花にこんなにも素敵なお話をくださるなんて、なんてお優しい方なんでしょう。
さくらんぼ見るたび巣栄を思い出して幸せになれそうです。
(東北のロンドンも初めて知りました)
ささやかなお礼ですがよろしければお持ち帰りください。
Cherry
本当にありがとうございました(^o^)
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