short・水栄
□君は僕の輝ける星
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「外、行こっか?」
栄口の唇がゆっくり動いて、囁きが届いた。
起き上がって近づいてくる影。
手首を掴んで引き起こされる。
(ヤバイって、こんな…っ)
栄口に聞こえるんじゃないかってくらい心臓の音がする。
「行こ、水谷」
少し冷たい栄口の手に導かれるまま、二人でそっと部屋を抜け出して、合宿所の裏庭へ。
「外のほうが少しは涼しいね」って、伸びをする栄口の前髪を風が揺らして、形のいい額をあらわにする。
「わぁ、星がキレー。あれって夏の大三角かなぁ」
栄口が指差す、満天の星空は確かに綺麗だけどーー。
でも、俺には栄口の瞳のほうが何百倍も輝いて見える。
(これって夢じゃないよな……)
俺はなんだか胸がいっぱいで栄口を見つめることしかできなかった。
「水谷?ーー眠い?」
言葉なく首を振る俺に、栄口は瞳を陰らせるとくるりと背を向けた。
「昨日の夜、俺、眠れなくて……今日も…眠れなくて、水谷と何度も目があって……。どうせ起きてるんなら、水谷と話がしたいなー、って思ったんだけど……」
話しているうちにうつ向いてしまった栄口は、今どんな顔をしているの。
「ごめんね、俺一人で星がキレイとか盛り上がって……」
俺の大好きな、澄んだ柔らかい声が震えてるのは気のせいじゃないよね。
「こんなとこまで付き合わせてごめんな。水谷、もう戻って寝てよ。ーー俺はもう少しここにいるから」
そんな淋しそうに独りでいるなんて言わないで。
男にしては華奢な肩に手を掛けて振り向かせる。
俺を見つめる茶色の瞳は潤んで、星明かりの下キラキラしてた。
例え何億光年の彼方にいても、栄口の涙は俺の心臓を貫く光を放つだろう。
「ごめんね、星より栄口を見ていたいし、話をするよりキスしたいんだ」
え…って形のまま、固まった栄口の唇に唇で触れる。
……やわらかくて、あたたかくて、どこか懐かしい。
お願い、俺を受け入れて。
「栄口が好きなんだ」
戸惑いながら、でも隠しきれない喜びを滲ませて、栄口が微笑む。
「俺も、水谷が……好き」
こぼれ落ちた涙が、星になった。
* * *
1ページ目は色っぽく、2ページ目はロマンチックにしてみたつもりです。