long・水栄
□仮初めの恋人 1
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side:栄口
……
喉の渇きに目が覚めた。
躯がダルい。
きっと、気を失うように眠りの世界に落ちていったんだろう。
横たわったまま、傍らにあるはずの温もりに手を伸ばす。
水谷……居ない?
いつもは苦しいくらい俺を抱き締めて眠っているのに。
水谷、どこ?
目を開いても、薄闇の世界が広がるばかりで。
「……っ」
喉がおかしい。
声が、出ない。
水谷、水谷、水谷、水谷水谷水谷水谷。
なんでベッドに俺だけなんだ……。
凄まじい不安感が襲ってきて躯が動かない。
指先が震える。
――これは悪い夢なのか。
なんで、俺は、また、独り、に、なってる、の。
みずたにっ。
叫びたいのに声が出ない。
――でも、もし、もしも。
叫んでも、水谷が来てくれなかったら?
呼んでも、水谷が応えてくれなかったら?
俺はどうしたらいいんだ。
声を出して水谷を呼ぶのが怖い……。
喉が痛くて――。
胸が苦しくて――。
「ふっ…」
呼吸の仕方が分からなくなる。
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