long・水栄
□仮初めの恋人 3
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春休みは阿部と二人でグラウンドの整備をしに学校に通った。
同じ中学でチームは違ってもシニア出身だから共通の話題には事欠かなかった。
ぶっきらぼうなのかな、と思ったら意外によく笑って、笑うとますます垂れ目になって……なんだか可愛かった。
話をしてると自分の配球と投手に強いこだわりを持ってることが分かって。俺はそんな阿部が少し心配だった。なんだか自分を追い詰めているようで、苦しくならないのかなって。俺が変に考え過ぎているだけで、捕手っていうのはそんなものなのか?って思ったりもしたけど。
阿部は次第に形になっていくマウンドをいとおしむような目で見てた。
阿部が女房役を務めることになるピッチャーってどんな奴だろ。
俺様な奴だったら、阿部と衝突しそうだな。
そのときは同中のよしみで俺がフォローしてやろう。
マウンドの土を丁寧にならす阿部の姿に、俺はそんなことを考えてた。
だんだんと桜の蕾がふくらんで、花が開き初め、満開をむかえようとしていた春休み最後の日。
突然の春雷と激しい雨が俺たちを襲った――。
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