∽NOVELS∽

□アイスと少年
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懐かしい君と。



【アイスと少年】



大阪、夏の陣。

その日、瑛士はバラエティの仕事で大阪に来ていた。
お笑いに命を懸けると豪語した瑛士にとって、大阪は特別な場所。
その分、気合が入りすぎて。
「もう、おれどうしたらいいかわかんないっす。」
収録を終えた後、どうしても納得がいかず、いつものように先輩芸人を捕まえて居酒屋で飲んだくれていた。
「おいウエンツ、お前ちょっと飲みすぎや。」
瑛士の手の中の焼酎はすでに5杯目。
けれど芸人たちの心配をよそに、瑛士はそのグラスの中身を飲み干した。

店を出て、繁華街をふらふらと千鳥足で歩く。
「お前大丈夫か?ホテル行ける?」
「だあいじょうぶっす。すぐそこですから。」
そう言って、瑛士は一人ホテルへの帰路についた。
大丈夫。
俺は大丈夫。
その思いの裏側で、冷静なもう一人の瑛士が泥酔した自分を見つめていた。
ああ、俺って、もろいなあ。
何でこんなに弱いんだろう。
情けない。
けれどそんな冷静さも、ホテルの前の横断歩道までたどり着いたころにはすっかりなくなっていた。
ふらふらと、歩き続ける。
注意力も判断力もない状態では、赤信号などに気づけるはずもなく。
右側で、大きくクラクションが鳴った。
目をやると、すぐそこに、車のヘッドライトがあった。
目がくらむ。

ああ、まずい。



急ブレーキの音と共に、瑛士の意識は途絶えた。







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