∽NOVELS∽

□DREAMING
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そうして、瑛士はこれまで以上に徹平を意識するようになってしまった。
徹平に触れたいと思った。
徹平のする何もかもが気になった。
徹平を見ていたいと思った。
彼との小さなやり取りの一つ一つが、妙に浮ついた。これではきっと、徹平も同じように、自分が特別な感情を抱いていると気づいたかも知れない。
けれどそれを自覚するたび、男同士という現実が立ちはだかり瑛士の熱を吸い上げていく。
仕事のこと、周りの人たちのこと、何より徹平のことを考えたら、これまでどおりでいるべきだ。

―よし、あれは、夢だったことにしよう。
叶わぬ片思いが見せた、つかの間の夢。



そう心に決めた矢先。
瑛士は徹平の家での曲作りに夢中になって、終電を逃してしまった。
しまった、と思った。
「タクシーで帰るわ。」
そう言って立ち上がる瑛士を、徹平はさびしげに見上げた。
「なんで?」
瑛士の足が止まる。
「泊まって、いきなよ。」
徹平は少しくぐもった声で言った。
あの夜が、フラッシュバックする。

―あれは、夢だったんだ。今までどおり、普通にしていればいい。

「…そうすっかな。」
そのとき、帰ることが出来なかったのは、意思の弱さからだろうか。
それとも。

そうしてそのまま曲作りを続け、きりのいいところでベッドに入ったのだった。
しかし、仰向けになったまま、またもや瑛士は身動きが出来ずにいた。
徹平は静かだ。眠っていない。
壁を向けば、先日のことが思い起こされて気が気でないし、徹平の方を向いても同じことだ。
そうしてしばらく仰向けのまま目を閉じていたが、一向に眠りは訪れない。
徹平は今、どうしているだろう。
何を思って自分の隣に横たわっているのだろう。
気になる。
気になる。
…お前は今、何を思っている?
ふと、首を横に向けて徹平を見た。
はかない月の明かりが、うっすらとその顔を照らしている。
そして、その光を受けて、一対の瞳が小さく輝いていた。
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