N短編
□空の蒼に誓って
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僕は 11歳のあの日まで
ずっとひとりでモノクロの空を見上げていた
「− ス− おいっリーマス!」
「 …え ?」
彼の声に急に意識を引き戻されて、僕は何ともなしに窓の外へ向けていた視線を声の方に向けた。
焦ったように必死な顔である一定の方向を指差すピーターと、
今にも大声を出して笑い始めそうなのを真っ赤な顔で堪えるジェームズが目の端に映った。
僕は彼らを不思議に思いながら、隣に座る声をかけてきたシリウスの視線の先をたどる。
「Mr.ルーピン…あなたにしてはめずらしいことですね。授業も聞かずに考え事ですか?」
眉間に皺を寄せたマクゴナガル先生に行き着くと、状況は一気に把握することができた。
(「しまったぁ;;」)
「すみません、少しぼーっとしてしまいました;;」
「学期末試験も近いので気をつけてくださいね」
「はい、すみません」
「みなさんもですよ」と教室中に言い聞かせる先生は、みんなが返事を返すと納得したように頷いて教卓へ戻った。
「さっきは何を見ていたんだい?かわいい子でもいた?」
ランチのために大広間に向かいながら、何か新しいオモチャでも見つけたかのように笑ってジェームズは僕の肩に腕を回した。
「お前じゃねーんだから」と後ろでシリウスが笑う。
「本当にただぼーっとしてただけだよ」
「えーつまんないのー」
「でも何か考え事してるみたいだったよ?」
僕の顔を覗きこんでピーターが「たまに楽しそうに笑ってたし」と不思議そうに言った。
「え、 僕 笑ってた?」
「笑ってたな、そういえば」
顎に手を当ててシリウスがそう返した。
自分でも気づかないうちに思い出し笑いしてたなんて。
しかもそれで先生に注意されたとか、すごく恥ずかしいな…。。
自分の額をパチンと叩いて、息を吐いた。
そんな僕の様子を見てジェームズは目を輝かせる。
「何を考えてたんだい?もしかしてエッチなこと?」
「お前そんなんばっかだな」
シリウスに呆れた声で言われ、ジェームズは口を尖らせた。
つまらない、とでも言いたげな目でシリウスを見つつ大広間の扉を押し開ける彼の後に続けて中へ入ると、青く澄んだ天井が視界を占めた。
あの日と変わらない。一点の曇りもない青空。
彼らが、僕のそばにいると誓ったあの日。僕も神様に誓った。
「考えてたっていうよりは、思い出してた…かな」
ぽつりと呟いた言葉を拾って、ピーターは僕を見た。
「思い出してた?何かおもしろいものでも思い出したの?」
「うん」
首を傾げるピーターに頷いて、僕は3人を見た。
「僕にとって 一番大切なもの」
彼らを守るために この身体を、自分を愛そう
(僕にはもうこの青い空を一人で見る必要は無いんだから)
2008.3/10