04*09

□伝えたい思い
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「こくんっ」
「!!」
 季節は冬から春へかわろうとしているはずなのに外はまだ冬の名残があり、涼しいどころか寒いくらいだった。
今は昼であるためか、いつもの寒さより幾分マシな風邪が入ってくる。
 生徒会室は風通しがいいため、この時期になると換気を含めた色々な理由により窓は開け放されている。その開け放された窓からは心地いい風と共に人を眠くさせる風も入ってくる。すぐ仕事に飽きてしまう俺と翼が主にその風のヴェールをまとい、そのヴェールの香りに酔わされ、狂わされ脱落する。
いつもならそうだったが、今日はそのヴェールが薄汚い俺にまとわり付くよりも、この綺麗な桃色の彼を取り巻いた方がいい。と思ったのか(だとしたらなんて失礼なんだ。)最初はそのうす桃色の髪をさわさわとやわらかく弄び、そして俺たちと同じ手口で桃色の彼をも、その色香に酔わせ、狂わせ、とりこにさせた。
いつもなら、どんなことがあろうとも寝ようとはしなかったのに今は頬杖をついた手から安定しない顔をかろうじてのせているが、いつ落ちるか知れたものじゃない状態を保ちながらすやすやと眠っている。
「疲れがたまってたのか…。」
だったら悪かったな。と思いながら俺はその安定しないが故にさわさわ音を立て揺れている髪に優しくキスをした。それと同時に



ーいつか思いが伝わったなら、もう一回、今度はちゃんとした、キスをさせてくれ。−
と強く願った。

 風の悪戯か、颯斗の頭が少しだけ動きうなずかれた気がした。●●

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