04*09

□甘い甘い嘘
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息を止めて。



「なあ?颯斗。俺が死んだら、お前どうする?」
突然の質問によって驚かされた颯斗は目を大きく見開き、え?と小さく唸った。
「だからさ、俺が死んだらどうする?」
そう笑って俺が言って振り返り颯斗を見た。
そしたら。
もう一度大きく見開いた目からは、
一筋の涙がなだれていた。
「、」
「嫌…で…す。死んでほしく…なんか…ない…。やっと…やっと、愛してくれる人が…できた…のに…嫌、嫌、嫌」
「颯…斗、悪かった。死なないから。」
「きゅ…」
「!」
そうやって俺が謝罪すると、
いつもは絶対やらない、ハグをしてくれた。
「いか…ないで…いかないで…置いてかない…でぇ…」



しまった。
やりすぎてしまった。
颯斗の家族関係があまりよくないことも知っていた。
愛情がないようなところで育ったことも。
やっちゃった。
言ってはいけない禁句だったんだな。



「今日は何日か…知ってるか…?」
「4月1日…?」
「ああ。」
「?」

エイプリルフールっつったら、俺、黄泉逝きじゃん?
息を止めて。
俺は少しだけ冷や汗を流したんだ。


嘘なんかつくもんじゃねえのかもしんねぇけど。
でもさ。
抱きついてくれるんだから。
俺としてはいい嘘もあると思うんだ。

エイプリルフール
嘘が許される日
そんな日が甘く染まる日があるなんてな。


「颯斗。死なないよ。俺は。
生きるからさ。」

「…それは…嘘ですか?」
「っ!わかってたのか…」
「僕を誰だとお思いですか?」
「…俺の恋人だ。」
「嘘は…今日だけですよ?」
「勿論だ。」

そうして俺たちは甘い甘いキスをした。

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