04*09

□貴方に渡す愛の花
1ページ/1ページ

季節が過ぎ去って、笑いあって、いつも楽しかった毎日が始まった季節となった。
ぼんやりと見つめた空は青くて、快晴で、だけれど鬱陶しい程に広がりすぎていた。
「颯斗!!」
少し気分が悪くなりかけた時だった。会長がいつものお見舞いに来てくれた。
「会長…、ケホ」
身体を起こしかけて、咽てしまった僕の背中をトントンと叩きながら一樹会長は大丈夫か?と僕に問いかけてくれる。
「大丈夫です…ありがとう、ございます」
あまり長い言葉は結構喉にきてしまうので、一度、きることに心がけている僕は、一樹会長に微笑んで今回もそういう風に流しておく。
「そろそろ…、戻れると…いいです。」
「そうだな。その前には体調を万全にしとけよ。」
「そうですね。そういえば、新学期…始まりました、ね。新入生、いますか?」
「いるよ。生徒会会計になった。天羽翼っていう長身の奴でなー、なかなか面白いぞ」
「よかった、ですね。お仕事、任せてしまって、すみません。」
「いいんだっつの、そういうのは。お前は気にかけすぎだ!」
そんなんじゃないですよ、と言いかけた時だ。
会長の手にある花が目に入る。
桃色の、僕の髪の色と同じ色。
あともう一輪が…、
「綺麗な、色ですね。」
会長は自分の手の中を見て、そうか?と首をひねる。
会長と同じ灰の色。
「灰の色だぜ?綺麗なんかじゃねぇだろ。」
確かに、確かに、だ。
綺麗ではない色と言われてしまえばソレまでだろうが、僕としては綺麗な色だと思える。
綺麗、というか、何処か…
結局分からずじまいな状況で僕は考える事を放置してしまった。
とりあえず話題を変えようと僕は会長を見上げて言う。
「これ、どう、したんです?」
「どうしたって?どこで買ったってことか?」
「買ったんですか?」
灰色の花なんて売られているところを見た事がない。
どんな突然変異だろうか。
「いや、買ってねぇんだ。本当はな、これ塗ったんだ。」
「塗った?」
花をわざわざ塗る必要なんて何処にあるのだろうか。
「だってさ、俺とお前の色、表現できないだろ。普通なら。桃色はあるんだけど、灰色ってなあ…」
「なんで、表現する理由あるんです?」
ソレを言ってから僕は会長を見上げた。
会長は真っ赤な顔をしながら俺を見下ろしていた。
「馬鹿か。お前は。本当に。俺はお前のなんだ?」
「恋…人…です」
「ああ。だから。」
結局意味が分からない。
一体どういう意味なんだろうか。
「俺、これから受験勉強スタートだからさ。あんま来れねえんだよ。だから!!」
「だか…ら?」
「だから!!、俺はいつでもお前と一緒にいれるようになんと言うかごにょごにょ…」

ようやく理解できた。
彼は僕を、気にかけてくれた。
「あり…がとうござい、ます。」

微笑む顔は凛としていて。

嗚呼、そうか。
あの花が綺麗だって感じたのは、【貴方】のようだったからだ。


「桃色と一緒にいるのは灰色だ。」


そう。
こういう風に。



凛としていて美しい。





【貴方に渡す愛の花】
というか
【僕に渡される愛の花】
って感じでしたね…。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ