10*09

□いつか聞いた旋律はどんな味がしましたか?
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「ん…」
うっすらと開く目は白すぎる部屋の壁や天井を写し取る。どうやら眠っていたらしく身体を起こそうとついた手は、普通なら生徒休養所のはずのベッドに触れた。
「スゥー」
寝相がよくなかったのか、いつもなら綺麗に整えられているシーツは今はかなりグシャグシャだった。そんなシーツのシワを指で引いて伸ばして遊んでいると細い糸のようなものを発見した。
「?なんだ?糸にしては短いような、フワッとしてるような…」
少し考えて俺はハッとする。もしかして…いやまさか。そんなはずは、
そんなもやもやして曖昧な心とは裏腹に俺の足はさっさとベッドから降りて、ほぼプライベートルームと化していてすごく汚いはずの保健室を見た。
「やっぱり…。」
そんな明らかな変化にさすがの俺も気付きあたりを見渡す。
「いない。じゃあ…!」
どこへ?と言おうとする口を自分の手で止める。自分の声で今、耳にした懐かしい旋律を消しかけるところだった。間違いない、この音…
ガラッと音を立て扉を乱暴に開きそのまま部屋を後にした俺はすぐに音の出ているらしい場所へと走った。
流れてくる音が段々大きくなってくる。

「ッ!!」
あの時からずっと見ていなかった音楽室に入り音の出所を調べる。それは予想通りにピアノの音で、そんな美しい音を奏でているのは懐かしいー…
「颯…斗…」
「!」
俺の小さい呼びかけに驚いた俺の年若い恋人はその肩を可愛らしくビクッと震わす。
「星…月先せ…」
「っ!」
やっぱりそうだった。あのシーツにあった糸は颯斗の髪の毛で、俺の部屋のー
「俺を寝かせて、ついでにまわりの整理をしてくれたのはお前だったんだろう?」
あの部屋は俺が寝る前までは者が大量においてあり、まさに腐界の森だった。そんな部屋が起きて俺が見たときには綺麗に整頓されていた。
そんなことをしてくれるのはー
「颯斗しかいないんだよ…。…いつ帰ってた?」
たしか卒業後にウィーンに行ったはず。
「5年いたので過程終了です。」
「そうか…じゃあもう日本に…?」
「はい、ずっと。…一緒にいれるんです」
そんな風に照れ笑いしている颯斗はとても綺麗で…
「ん!!…ふ…ぁ…」
気付いたらキスをしていた。颯斗の白い肌が赤くなるのを見てますます俺の理性がもたなくなり、舌を無理やり入れて颯斗の舌に絡ませる。
ああ、甘い。お前は甘すぎるんだ。と思いながら「ポロン」とピアノを鳴らす。
今日はもう放さない。明日も明後日も、
ずっとずっと永遠に。
放したくない。

 −いつか聞いた旋律はどんな味がしましたか?今、俺の聞いた旋律は甘く甘く甘い味がしていました。−

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