10*09

□I LOVE YOU!!
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 お前を見てると少しだけ心臓の下らへんがムズムズするんだ。
なんでなのかって何度も考えたんだ。
でも答えなんかわからなかった。
 だけど、俺は今初めて.お前自身に触れるて、その理由がようやくわかったんだ。


「少し…話をしたいんだ…。」
そう俺が言うのを、あいつは特に何も問わないで「わかりました。いついけばいいでしょうか?」
と答えてくれた。あいも変わらず、他人との距離を取るのがうまいヤツだと思う。俺が聞かれたくないことをしっかり分かってくれて、聞かないで笑って優しくしてくれる。一緒にいてこれほど心地いいやつはいないだろう。あいつの生い立ちをあいつ自身から聞いたことはないが、きっと優しく接せられてきたのだと思った。
だから俺はあいつの優しさにいつも甘えた。だけど、本当は甘えてなどいけなかった。あいつの小さい背中にはあいつ自身の重荷を背負うので一杯一杯なはずなのに。俺はそんなことすら考えなかった。ただあって話たいな。くらいに思ってただけだったのに。あいつは、いつもと様子が違う俺のことを気遣って無理して、生徒会の仕事もあったろうに、ここ保健室にやってきた。
「おい、青空…お前、無理してるだろう…?」
「え…?いえ。そんなことはないですよ」
そんな風に強がっていてもよく見ていれば簡単に分かるくらいにコイツの顔色は悪かった。
そんな弱っているコイツに俺が単に話をしたかったという理由で無理に何かさせても事態が悪化することだけなのは保険医でない俺にもわかることで、そして保険医なら見過ごすわけにはいかないわけで、勿論今日はいいから寝てろと言おうと口を開こうとした瞬間にタイミング悪く、コイツの方が早く口を開いてしまった。
「で…先生。お話とは…?大事なことですか?」
「いや、そうじゃないんだ。だから…」
寝てろと言う前に俺の口は閉ざされてしまった。
「!!」
なんで?なんだ?なんだ、どうなってるんだ。状況は?全く理解できない。コイツがいきなり…
「青…空…?」
いきなり倒れこんできて、コイツより俺の方が身長が低いから、いやその前に、コイツは立ってて俺は座ってて、だから…だから?
今の状況を確実に表現するのは今の俺には難しく、ただコイツが今俺に倒れこんできて俺にキスをしてるくらいにしか。いや、キス?キス…?
「あっ青っ…!」
突然の口付けに酔わされそうになって危険だと判断した俺はズット俺に口付けているコイツをどかそうと手をその華奢な身体にかけようとしたときだった。瞬間ずるっと嫌な音と共に、儚く倒れこんだ。
「青空っ!!!」
いつもなら「はい?」って優しく聞いてくれるのに今は全くそんな風に答えてくれるどころか息すらまともに出来てないような状態だった。







青空が倒れてから俺はすぐ保健室にある白すぎるベッドに急いで駆け寄り、その上に軽い青空を乗せた。
そして馬鹿みたいに青空の手を握ってごめん。と、しきりに謝っていた。それ以外に出来ることはあっただろうに。本当に馬鹿みたいに手を握っていた。




「せん…せ…?」
「!!青空!大丈夫か!!」
「ええ。あ…僕…」
よかった。目覚めてくれた。
大分顔色もよくなったような気がする。
「すみません…。お話…聞けなくて…」
「馬鹿…。そんなことどうだっていい。大した用じゃないんだ。そんなことより、お前はどうしたんだ?体調が悪かったわけではないよな?あの時は全然顔色も普通だったし…」
すると青空は黙って視線を下にする。
聞いてはならないことだったのかと思って俺は内心舌打ちする。
「悪い…話したくないなら…」
「いえ…。ただ、あの人から電話がかかってきただけです…。」
「あの人?」
「僕の…母にあたる人です。」
俺は内心凄く驚いた。だって、青空は本当によく育てられてるから、親には良くしてもらってると思っていたからだ。そしたらどうだ?青空はあまりというより全然よく思っていないような口ぶりだ。なぜ?
「あの人は…もとから僕のことを嫌いでしたから…、いつも出来損ないと言われてきました。だから、今回もそう言われるのかもと思っていたんで初め電話を取らなかったんです。そしたら…こっちまでわざわざ来て…」
「なんか…言われたのか?」
「面と向かって出来損ないだ…って言われるのはやっぱりキツ…い…です…ね……」
そんなことを知らないで俺はー…
そんな真実を知って俺は自分がどれほど馬鹿だったかを気付かされた感じがした。
そう感じると謝ざるを得なくて。
「悪かった…そんな青空に…」
「いいんです。僕はそちらの方が救われた感じがしたんですから。御礼を言う方なんですよ?僕は。…!」

そんな風に悲しそうに言わないでくれ。

そう思ったら俺は本能で動いた。

家族の愛情を知らないで育った哀れな天使に救済をという意味で。

長い長いキスをした。




「っは…せんっあ…」


狭い密室に木霊する声が潤んでいたのがだんだん普通に戻ってくるのを感じ、俺は少しだけ救われた気分になった。







帰り際青空が俺にふと思い出したように聞いた。


「先生…そういえば、お話って?」
「ああ…それは…」




































『俺はお前が好きだよ』

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