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□王様ゲーム
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俺は王になりたかったんじゃない。

だけど。

アイツに対しての王にはなりたいと願った。

だから王様ゲームなんかして調子に乗った。







郁が「生徒会会長の不知火君がね。僕に、先生ってゲームとか弱そうすよね。」
って鼻で笑ってくるからさー。ちょっと懲らしめたくてさ。いい案あるんだけどさー…人が足りないんだ。直獅先生と一緒に来てよ。颯斗君も来るからさ。琥太兄ぃ来ないなら僕が彼に何かしちゃうかもよ?」
と後半部分は脅し内容で聞いてきた。
ハッキリ言って面倒だったが内心、コイツが颯斗に何をするのか心配もあった。だから、一応ついて行くから颯斗に何もするなよ。と釘を刺しつつ応答した。
「んー。何もするなよって言われてもー…運だよ。王様ゲームだもん。」
と郁がサラと言うのに俺は馬鹿みたいに開いた口を閉ざすのに必死だった。
「お前…それ…」
「あ、大丈夫。夜久さんはいないから。」
「そうじゃない。それは…」
「ん?キスする、てすればキスしてくれるんじゃない?誰かに颯斗君が」
俺の頭が真っ白になる。
冗談じゃない。ただでさえ颯斗は俺にキスすることさえ顔を真っ赤にして最後まで抵抗するほどなのだ。そんな貴重なキスを、誰かに取られてたまうか!!!
「郁。俺もいくが、その前にメンバーを教えろ。」
「ああ、よかった。行く気になってくれた。Nice 颯斗君Power …メンバーは、僕と琥太兄ぃ、直獅先生、生徒会チームである不知火君、天羽君、颯斗君。」
「わかった。」
だったら尚更負けられない。
なぜなら、直獅はまだしも不知火と天羽は絶対調子乗って悲惨なお題を言う。それがもし、万が一。キスだったら…。ソノ前に俺が一番危険視しなければいけないのは…
「ん?何?琥太兄ぃ?あ、言っとくけど、僕だって容赦なしだからね。」
そうだ。まず第一にコイツは俺に素晴らしい恨みを抱いているのである。なぜなら…
「だって、僕から颯斗君を奪った恨みを晴らせるんだもん。」
嗚呼、絶対勝たないと。



てなわけで。
俺たちは保健室で王様ゲームをしていた。
郁の手にあるわりばしを次々にとっていく。
「誰が王だぁぁぁ!!!!!!!!」
不知火と直獅が五月蝿く喚く。
どうやら、あいつ等ではないらしい。
よし。不知火はない。
そんな中俺はふと手元を見る。
「あ…俺が王だ…」
「ええ!!琥太兄ぃなの!?」
「げえ!琥太郎センセかよー!!」
「じゃあ、素足体調命令かぁ…」
そうか。命令。ふっ、じゃあ手始めに…
そんな感じで俺は(なるべく不知火らへんにあたれと願いをこめ)こう言った。
「ふぅ…じゃあ…3番が俺に跪け。そして琥太郎様と呼べ。」
「どうぇぇぇ!!!!」
お、不知火が叫んだ。もしや…
「あ、僕です…」
「どうぇぇぇ!!!」
なんでだ!!なぜ颯斗なんだ!!別に俺は颯斗にそんなこと…くそ。だったらキスにすればよかった。
「えっ…あの…跪くのは…こうでしょうか?」
ああ、妖艶にコイツは…
スッと俺の組んでる足元に肩膝立ちで立ち、控えめに俺の方を見てくる。
「あっああ…」
そしてにこやかな微笑みで…
「琥っ…琥太郎様…」
と言った。
「颯斗ぉぉぉ!!!!頑張ったぞぉぉぉ!!!」
そこで俺は郁の方を改めてみる。
無茶苦茶不機嫌そうだ。するといきなりひらめいた顔になり…
「あ、そうそう。言い忘れてたけど。王の命令にどうしても逆らわずには得られないならパスありね。だけど3回まで。それ越したら、罰ゲームだから。」
と言った。即席ルールを作るのはとても上手い。
「わかりましたよ!!だったらやりますよ!!先生VS生徒会メンバーですね!!!」
「うん。そう。じゃ、次!!ほらとって!!」

2番手。王→俺。
「じゃあ…。俺の靴に6番が跪いてキスを3秒間して、忠誠を誓え。」
「6番は誰だぁ?」
「…僕です…」
「颯斗ぉ!!!」
不知火がわたわたと「無理ならパスしてもいいぞ!!」と言ってる。余計なことを…
「いえ…やります…」
「へえ。頑張れぇー、颯斗君。」
「颯斗ぉぉぉ!!!!!!」
また颯斗は俺の前に来る。そして跪き…そっと俺の靴にキスをする。1,2,3…
「…僕の心とこの身は貴方様のためだけに…」
と言って耳まで赤くする。
かわいい。
「颯斗!!!!よく頑張ったー!!!」
「そらそらー!!!」
「ちっ」
郁…おもむろにこっちに向かって舌打ちするな。
「いい?!いくよ!!早く引いて!!」


3番手。王→郁。
「じゃあー…5番が1番に馬乗りになって5番が1番の嫌いなところを10秒触ってよ。」
(…投げやりだろ。郁。)
「1番は…?ちなみに5番は俺だ。」
「…会長…僕はのろわれて…」
「言うなぁ!!!颯斗ぉ!!!」
「颯斗だったのか…で?嫌いなところは?」
「みっ…耳…」
「じゃあいくぞ。」
そういうとコクンと頷き颯斗が馬の形を作る。その上に俺はのっかって耳をしきりに10秒間揉むように触った。
「あん!!や…ぁ…」
顔を真っ赤にさせて啼き出してしまった颯斗を見て俺はなんとなくその気になって、真っ赤な耳をなぞるようにしていやらしく触る。
「んん!!!ひぁ!!」
「はーい。10秒、」
俺が名残惜しく馬を解放すると、颯斗がふらっと地面に横たわる。
(結構…キツかったんだろうな…)
なんとなく申し訳なくなりながらも俺は次のくじを引いた。

引くに引きまくって今で50回目。
ソノ間にもいろんなことがあった。
…ま、あえて語るまい。
そして両者ともパス0回。


「じゃあ、次で時間的に最後だね…」

「よし!!」


50番手。王→俺。

「…郁、悪いな。俺は、もう可哀相なやつを出したくない。」
「ちょ!琥太兄ぃ!!」


「7番が俺とキスする!!」

「…琥太兄ぃ…甘いよ…」
「!!」
「僕はそういうこともあるだろうと思って一応用意してたんだ…7番」
「!!」





「…7番は…僕です…」



そこからは言うまでもなく。
罰ゲームを嫌がった颯斗は俺の元により…






「ちゅっ」





甘い甘い久しぶりのキスをしてくれた。







         王様ゲーム。
           これにて終了。

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