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□Deep×Deep
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「一緒に…寝てもいいですか?」
そう颯斗から言われた時、俺はどうしても信じられなくて。なんて言った?と聞き返した。すると颯斗は綺麗な瞳を涙で潤ませて俺に抱きついてきて言った。
「怖い夢…見て…寝れなく、て。」
さすがに俺も絶句した。
この頃、颯斗の目の下には、何時にも増して凄い濃い隈があるな。睡眠不足なのか。と思ってはいたが…。いつもなら夢なんて、夢は夢だ。ということで放って置く颯斗なのに!!絶対に何があっても人を頼るような奴じゃないのに!!
「そうか…どんな夢を見るんだ?」
そう俺が言うと颯斗は言葉に詰まったように唇をきゅっと噛んだ。
「いや、別に、颯斗が話したくないならいいよ。あ、あと。一緒に寝るのは全然構わない。」
「その…、僕が、…やっぱり、言わなくていいですか?…あの。じゃあ、何時に…先生の部屋ですか?」
颯斗は苦しそうに心臓をきゅっと抑えながら俺に聞いてくる。正直、その上目線で俺を見る颯斗の潤む目が可愛くて仕方ない。それをなるべく直視しないように俺は言う。
「いや、俺が颯斗の部屋に迎えにいくから。…なあ?颯斗…。明日、休日だから身体…重ねても、いいか?」
何を言ってるんだ、俺は!!と思いながらも、俺は颯斗をゆっくりと見てみる。潤んだ瞳に映る俺は酷く弱そうだった。俺はいつもこういう風に見えているのか。と考える。
「あの…その…」
颯斗はよほど返答に困った様で俺をちらと見ては目をそらす始末。
「あ、その、…え、と…はい…。」
3秒後、颯斗は真っ赤な顔で(それはもう耳から首まで真っ赤)コクコクと頷いた。
その様子に酷く頬が緩むのが分かる。
「わかった。じゃあ今日の夜。」
「あ、ありがとうございます。失礼しました。」
やはり真っ赤な顔でわたわたと保健室の扉を開ける颯斗はとても可愛くて、今すぐにでも職務を放って、可愛い可愛い俺の恋人と身体を重ねたい欲望に駆られた。


午後6時30分。
俺は今、颯斗の部屋に、現在進行形で迎えに行っている。
「颯斗。いるか?」
少し間が開きカチャと控えめに扉を開ける颯斗はパジャマ姿で、清楚な雰囲気を纏っていた。
「じゃあ、行くか?」
「あ、はい。」
顔は赤いがいつもの颯斗である。
その様子に俺は少し安堵する。
「颯斗と手を繋ぎ俺の部屋へと行く道を辿る。その間にも颯斗はいつになく甘えてきた。キュと抱きつくように寄り添いながら、俺の後を付いて行き、俺がふら付かせていた颯斗の手を握ってやると、いつもなら恥ずかしいらしく小さく1回キュと握り返すくらいなのだが、今回はずっと握り返してくれていた。どうしたんだろう。よほど怖い夢を見たのだろうか。
そうこう考えてるうちに俺の部屋に着く。
鍵を開け颯斗をベッドまで抱きかかえて移動する。
「わ!、せっせんせ!!あっ歩くから、歩きますから!!おっ降ろして…!!」
お姫様抱っこの時だけが、いつもの颯斗の反応だった。
「だーめ。怖いんだろう?もっと甘えていいぞ。」
「ぅ…。」
そう俺が笑って言ってやると颯斗は俺の腕の中で身を小さくして俺の胸に颯斗の可愛い頭を押し付ける。
そんな颯斗の様子に俺の頭は3分の2ほどは可愛いで埋まっていたが残りの3分の1で、眠いんだな。と思った。
颯斗は猫みたいで、眠かったら本当に人に甘えてくる。優しい言葉をかけると、それに縋る様に身を預けてくる。
「颯斗。眠いなら寝てもいいぞ。」
「…ないです。眠くない…で、す…」
そう強がっても俺の胸でウトウトして、今にも寝てしまいそうな勢いだ。もうとっくにベッドには着いているのだが俺が降ろしていないから颯斗は宙に浮いたままで余計、心地いいのだろう。
「颯斗…。颯斗…。」
「琥…太…郎、さ…ん…」
呼びかけてやると、気持ちよさそうに途切れ途切れに颯斗が俺の名前を呼び返してくれる。
「ラ、ララ、」
子守唄でも歌ってやるかな?と思って俺は颯斗の耳元で歌ってやる。
「…フフ。くすぐったぁい…。」
最初はくすぐったそうにしていたが段々気持ちよさそうにムニャムニャ言っている。
中々寝付かないのは、その夢とやらを気にしているからなのか。
颯斗は尚も琥太郎さん。琥太郎さん。と呼びかけてくる。こういう時はキスをしてやると颯斗は落ち着く。
そう思ってからは身体が自然と動いていた。
「ン…、んん」
引っ込めていた颯斗の舌を無理やり絡めとり、深い深いところまで進む。
コクコクといつもなら飲むはずの唾液も、今はつぅーっと颯斗の口の端から伝って落ちる。
(やっぱり、眠いのか。)
暫くすると、いつもなら酸素を求めるため動くはずの唇が、簡単に力なく落ちてしまった。気がついて俺は颯斗を見ると、すぅすぅと寝息を立てて眠っていた。
どうやら眠ったようだ。

深く、深く眠りに落ちてまた朝起きたら、深く深いキスをしてやろう。
だから、今はこれだけにしておくよ。

「ちゅ」
颯斗の白いおでこに軽く触れるだけのキスをして。

俺はベッドに入る。

少し早いけどまあ、いいか。
そう思って俺も眠りに着いた。

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