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□エデンは何処に?
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キス。と言われればキスするし、セックスと言われれば勿論セックスだってする。
だけど、いつだって俺は本気じゃなかった。
本気じゃないというか、本気になれなかった。本気になれる気がしなかった。
アイツに会うまでは。

「颯斗!!」
「あ、先生。」
ふわんと微笑む颯斗はまるで薔薇のようで。だけど、ここは公共の場。俺にとっては職場。つまりは学校である。だから、どんなに颯斗が可愛くても、絶対に押し倒してはいけないし、勿論、キスなんかしてはいけない。
「颯斗、言っただろう。琥太郎と呼べと。」
俺が照れ隠しにふてくされた顔をして見せると、颯斗はいつも通りに巧みにかわした。
「駄目ですよ。先生。ここは学校です。二人きりじゃないんですから。」
「颯斗は厳しいな…。じゃあ、授業が終わったらここに来い。」
「ふふっ。分かりました。では。」
やっぱり颯斗は、俺より上手だと思う。



放課後に先生に呼ばれたから、なるべく生徒会の仕事を早く終わらせて早足で保健室に駆け向かう。
「せんせー…琥太郎さん。」
がらっと扉を開けて、僕は先生の御願いを一つ叶えた。



「琥太郎さん」
耳元でそう囁く声は、とても温かくて、凍てついた身体を温めた。
「ん?凍てつく…?」
重い瞼をゆっくりと持ち上げると何故か、俺は書類という名の布団に埋もれて、冷たい床の上で寝ていた。だけど、その隣には俺の愛すべき颯斗がいてー…
「颯斗…。」
「はい。」
なんとなく、隣にいるだけなのに以上に安心する。
「颯斗…、颯斗…」
「ふふふっ、どうしたんです?琥太郎さん。」
「好きだ。」
「っ!」
不意打ちとは自分がされるには気分が悪いが、する側ならば、とてつもなく快感だ。
「キス…したい…」
「いいですよ。」
あまりにもすんなりと受け入れられたものに俺は驚く。
だけど、これが颯斗だ。
だから。
俺は好きになったんだろう?
きっと。そうなんだろうな。

「ん…ふぁ…」
「ん、ンン」

口の端から伝う銀色のの糸は俺らのつながりを表してるようで、気分が良くなる。
もっと、と欲情する。
「ん、はぁ…ンン」
舌を追いかけ、絡める。

伝う銀色が枝分かれして首を伝うのにすら、俺の欲を興していく。

やっぱり、俺は颯斗が好きだ。
世界一。
大好きだ。

俺の楽園はここにある。
颯斗の楽園も、ここにあってくれるといいと思うんだ。

だからさ。


「大好きだよ、颯斗。」


俺のエデンは今、此処に。

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