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□テスト?
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周りの騒音はテストの結果の話で持ちきりだ。
そんな騒音は僕のところに来るのは思ったよりも早く。
宮地君に肩を叩かれた。
「どうだった?青空は。」
と案の定テスト内容で聞かれた。
「宮路君のほうはどうでした?」
「俺は…まあまあだ。」
「僕もです。」
言ってしまえば、別の人が見れば確実に上だろうと言うが別に僕自身が上と思わないのでまあまあと言っておく。
「嘘だろう。青空は今回も学年一位を誇っているだろう。」
「そうなんですか?」
そう僕が言うと微妙な反応が返ってきた。
「なんで確かめないんだ?自分の順位を。」
興味がないんです。と言ってしまったら、宮地君は友人としてではない眼差しを向ける事だろうと思う。だから。
「今、時間が全くといていいほどないものでして…」
「そうか…、大丈夫か?青空は毎回何か背負いすぎてて…」
「そんなことないですよ。」
先の言葉を今ここで聞くのがとても怖くて。
僕は悪いなと思いながらも途中で宮地君の言葉をきってしまった。
「だから、安心してください。…、そろそろ僕は生徒会室へ行かなくては…すみません。」
「嫌…、ってこれから行くのか?」
「ええ、書類が山ほどありますので。」
「そうか…、頑張れ。」
「はい。ありがとうございます。」
きっと宮地君はもっと別の言葉を僕に掛けたかったのだと思う。
だけれど、彼はその言葉を飲み込み、頑張れとだけ伝えてくれた。
そういうところが彼のいいところだ。
そう思いながら僕は必要な書類を仕上げるために地獄の門を開いた。


「颯斗ー、飯ー。」
気が付けば空には沢山の星が瞬いていて。
気が付けば時計の針が9:00をさしていて。
気が付けば会長が僕の手を必死に止めていて。
「何を…されてるんです?」
「お前が全く呼びかけにも応じずにスゲエ集中力でカリカリやってるからさー」
ああ。と僕は納得した。
どうにかして先生のお仕事を減らしたかったから、少しだけ周りとの何かを遮断してしまったようで。
「すみませんでした…、あの、それは?」
会長の手にあるお盆に目をやると会長はハアと溜息をつきながら言った。
「めぇーし。ご飯を食べないと駄目だよ。って誉が言ってたんだ。」
「金久保先輩が?」
「ああ。丁度そこで会って…、颯斗のこと聞かれたから、生徒会室にこもりっきりだよって言ったら…この通り。」
会長はカタンとお盆を降ろして見せ、まだ湯気の立つご飯を僕の前に置いた。
…勿論書類をどかして。
「会長…僕は別に…。」
そういって僕は書類に手を伸ばす。
その手をはたいたのは意外にも会長ではなくー…
「悪い。勝手に上がらせてもらった。」
「琥…星月先生…」
想定などしていなくて。
思わず癖で琥太郎さんと言いそうになってしまった。
「颯斗。仕事は大事だが、食事は取らないと。体調崩すぞ。」
「なんで、星月先生がいるんですか?」
会長が先生に聞く。
「ああ。本当は…颯斗。テスト学年一位おめでとう。」
「え…ありがとうございます。」
「お前の事だから、どうせ見てないんだろう?」
「…はい。」
見てはいない。教えてもらったけど。
そうして僕等が話していると、いつの間にか会長はいなくて。
それをいいことに先生がスプーンをこちらに差し出してきた。
突然の事で身体が反応できなくて。
「え…あの、!」
「はい、颯斗。あーん」
先生がやってきたのは、まさかのソレで。
「ほら、あーん」
「え、あの、先、自分で、できま…!!」
「よくできました。」
話すときには口は普通開く事を忘れていた。
嗚呼。人にこんなことされて食べ物を口に入れた事など今まで一度もなかった。
「ちゃんと食べないと駄目だぞ。」
そんな事まで言われたのも。
「ちゃんと食べれないなら、いつでも食べさせてやるよ。」
「いい!!いいです!!自分で…」
「じゃあ、俺に見せてみろ。テストしてやる。」
「テスト…?」
「上手く食べられなければ、この料理、全て俺が食べさせてやる。」
そんなの僕が羞恥で先にギブアップするに決まっている。
そう思いながら僕は食事を開始する。
最初の一口を食べた時だった。
「ぶっぶー。」
「え?」
「颯斗。お上品すぎ。はい。全部俺が食べさせてやるよ。」
「ええ!いいで…!!」
「ほら、あーん。」
勢いよく迫ってくるスプーンは僕と先生を繋ぐ甘い物。
僕は顔を赤く染めながら、その甘さに惹かれていった。

「ほら。あーん」

「明日もテストするからな。」
「!!」

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