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□祝福を差し上げよう
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「忘れてたのか?」
「…はい。」
信じられないでもない。
まあ、確かに。颯斗が誕生日を祝われた事がないのも知ってはいたが、だけど。
「さすがの俺でもわかってるんだぞ。」
「はい。ですが…もとより、存在理由が分からないような僕に祝ってくれる方などあの家にはいませんでしたから。」
それを聞いて俺は少しムッとする。
こんなにいいやつを祝わない理由が分からない。
こいつのことは俺が一番分かってる。
だから。
こいつが祝われなかった分まで、俺が今日から何日でも何年でもかかってでも、祝うんだ。
「颯斗」
「はい?」
「何年かかっても、祝い続けるから。」
それを聞いた瞬間に元から大きい目がさらに見開かれる。
そこから零れた涙は透明で。
颯斗の頬を伝ってぽたりと落ちる。
「っ…ありが…、ごめ、なさ…」
涙で上手く喋れていないが、きっとありがとうございます。ごめんなさい。だ。
「なんで、謝る?」
「だ、って、琥太郎さんがお祝い、してくれてるのに…啼いて…」
「…それが普通だよ。」
お前は、今まで自分を閉じ込めさせすぎていた。
そこまで束縛したら、酸欠になってしまう。
そんなこと、させない。
絶対に。
「大丈夫。大丈夫だから。」
俺はそういってキュッとその華奢な身体を抱きしめる。
「平気。平気なんだ。」
華奢な身体が震えながら縮こまるのを肌で感じながら、俺はもっと強く抱きしめる。
「だから…もう、自分を追い込むのはやめろ。」
もう、そんなところに一人でいるな。
「一人は…怖いんだ。」
怖いから、手を差し伸べるのは俺だから。
勿論、他になんか手出しなんかさせない。
「颯斗…。」
俺は颯斗の顎をくいと持ち上げる。
潤んだ瞳からはもうあの時の涙は流れていなかった。
「今日が、お前の生まれた日だ。」

祝福を差し上げよう。
沢山のキスと共に。
沢山の祝福をー…







お久しぶりデス。
颯斗、おめでとー!!!

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